2016年7月
【火曜】 スポーツマウスガードの効果
スポーツマウスガードには大きく分けて、ケガの予防と噛み合わせの補正の2つの効果があります。
ケガの予防効果で確実なデータがあるものは、相手と接触するスポーツにおける唇、前歯、顎関節などのケガを軽くする、脳振とうの予防、歯によって相手プレーヤーに危害が及ぶことを防ぐというもので、この効果により現在ラグビー、アメフトや様々な格闘技で試合時の着用が義務化されており、推奨されるスポーツも増えています。また、最近の研究ではマウスガードをつけていることによる安心感がパフォーマンスに大きな影響を与えていることがわかってきました(プラセボ効果)。自らの身体を、適切なプロテクターでしっかり守ることにより、より安心して最大限の力を出すことができます。
ケガの予防効果よりもさらにスポーツパフォーマンスに関係していると考えられているのが噛み合わせの補正効果です。人の噛み合わせは28本もの永久歯が自然に生え変わることによって形成されたもので、理想の噛み合わせにはほど遠いものです。歯科界ではマウスガードが開発されるはるか昔から「かみ合わせ」と「運動能力」についての研究が行われており、個人差やスポーツによる違いはあるものの「よい咬み合わせ」は「よいパフォーマンス」につながる場合があることがわかっています。そこで、適切に作成したマウスガードによって上下の歯の接触面積を増やし、より確実に「咬み締める」ことでパフォーマンスの向上が望めないかと、現在、スポーツ分野の医学、歯学、生理学がこぞって研究を行っています。
最近の研究によると、力を入れるときに「咬み締めるタイプ」の人と「咬み締めないタイプ」の人がいて、「咬み締めないタイプ」の選手におけるマウスガードは、ケガ予防以外に何の効果も期待できないことがわかってきました。また、一概にスポーツといっても種目やポジションによって必要な動き、筋肉、能力が異なります。このため良い咬み合わせが「常に」スポーツ「全般」の能力向上に繋がるという科学的な証明はいまなおなされておりませんし、今後もされることはないでしょう。そのうえで、スポーツに携わる歯科医師は、常に新しくなる専門的知識に基づいて競技の特性や個人の能力にあわせたマウスガードを作成します。これにより咬み合わせの補正効果が期待でき、スポーツ界に貢献していけるものと考えております。