2016年9月
【火曜】 アベノミクスと社会保障
皆さん、「アベノミクス」という言葉はお聞きになったことがあると思います。これは安倍内閣の経済政策の事で、安倍首相を示す「アベ」と、経済を意味する「エコノミクス」とを組み合わせた言葉です。
アベノミクスとは、3本の矢でデフレを抜け出し、日本の経済を回復させる政策ですが、その効果はどうでしょうか。皆さんの生活は楽になったでしょうか。
さて、アベノミクスの1本目の矢は、金融緩和です。世の中に出回るお金を増やし2%の物価上昇を目指します。賃金が上がらないのに物価が上昇しているため、働く人の生活は苦しくなっています。2本目は財政出動、つまり公共事業です。無駄な公共事業はかえって借金を増やします。3本目は成長戦略、これは企業が活動しやすいためにルールを緩めて、新しい産業を支援し育てる狙いです。一部の企業は大きな利益を得ていますが、内部にお金を貯めこみ、賃金の上昇などに結び付いていないのは、皆さんもお感じの事と思います。
一方で、安倍首相は、年金・医療・介護・子育てといった社会保障を硬い岩にたとえ、「ドリルで穴をあける」と言いました。これは、社会保障費を毎年5000億円削る方針です。年金・医療・介護・子育ては、国民を守る大切な硬い岩で、そこにお金を出し渋っては、皆さんの生活が良くなるはずはありません。
さらに、国の借金を減らすために狙われているのは、消費税の増税です。「増税分はすべて社会保障に使う」と公約し、多数の議席を得て、消費税を5%から8%に増税しましたが、その結果はどうだったでしょうか。増税分の大半を国の借金返しに使い、消費は落ち込み、医療や介護や子育てが良くなったとはとても思えません。先送りになりましたがさらに10%への増税を計画しています。
アベノミクスの結果、経済は成長せず、景気は回復せず、賃金は上がらず、消費も伸びていません。また一部の企業やお金持ちだけが裕福になり、貧困と格差が広がっています。私たち保険医協会は、支払い能力のある企業や個人にそれなりの負担を求め、消費税増税に頼らず、社会保障を充実させて、国民の健康を守る社会を作ることこそ大事である、と考えています。