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健康情報テレホンサービス

2017年4月

【火曜】中高年のうつ病と自殺

 警察庁の自殺統計によると、平成27年におけるわが国の自殺者数は2万4025人でした。前年に比べて1402人減少していますが、決して少ない人数ではありません。

 自殺者数を年齢別に見ていくと、50歳以上の方が占める割合は57.7%と半数以上となっています。40歳~49歳までの方も含めると、74.6%にも登ります。中年の捉え方には年齢差があり、明確に区別されているわけではありませんが、厚生労働省の一部資料によると、45歳から64歳を中年期、それ以降を高年期とするものもあります。警察庁の資料からは、中高年の自殺の多さが見て取れます。

 自殺に結びつきやすい要因のひとつとして、うつ病が挙げられます。厚生労働省の「平成26年患者調査」によると、40代が全体の19.6%を占めてトップとなっています。続いて、60代、50代と中高年期にメンタルヘルスの不調を訴える人が多いことが注目されます。

 中年期の人には次の世代の人たちへの課題として自分たちの子どもを育てることに限らず、仕事の上で、次の世代の若い人たちの成長をサポートしたり、これまで培った知識や技術を後の人へと伝えていく責任があります。この課題が達成されないと、自身の体力や能力、可能性の限界に直面し、自分が思い描いていたように生きられなかった事への葛藤が出現します。そして課題が達成されないままに高年期になると、死の恐怖や人生をやりなおせない焦りや絶望感がもたらされます。このように中年期の課題が達成されずに葛藤状態に陥り、慢性的にストレスがかかっている状態は、うつ病発症のリスクになります。

 しかし中年期の葛藤はマイナス面だけでなく、人生に必然的なものであり、その葛藤を克服して人は成長すると考えられています。克服には、もしかすると時間を要するかもしれません。そのため、葛藤を乗り越えていくために踏ん張れるだけのエネルギーがいります。うつ状態はそのエネルギーが十分ではない状態ですから、適切な治療をして、課題を克服するためのエネルギーを回復させる必要があります。

 うつ病は適切な治療により治る病気です。ひとりで悩みこまず、気になる症状があるようでしたら、かかりつけ医を受診してみてください。

 

 

    

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