2017年5月
【水曜】パーキンソン病
パーキンソン病は今から200年前の1817年にイギリスの開業医であるジェームス・パーキンソンによってはじめて報告された病気です。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで活躍したマイケル・J・フォックスがこの病気のために若くして俳優引退を余儀なくされたことでも知られています。人口10万人あたり100名以上の患者さんがいるとされており、脳神経系の病気としては比較的多い方です。人口の高齢化とともにますます増加すると予想されています。
主な症状は、身体の動きに関係する運動症状とそれ以外の非運動症状に分かれます。運動症状は、じっとしているときに片側の手足がふるえる、動作が全般的に鈍くなる、筋肉に特有の硬さが現れる、立ったり歩いたりした際にバランスを崩しやすくなるなどが代表的です。一般にこのような身体の動きに変調がおきる運動症状の出現でパーキンソン病に気がつかれます。
非運動症状は、排泄の障害や起立性低血圧などの自律神経症状、睡眠の障害、幻覚、うつ等の精神症状などがあります。最近では非運動症状の中でも、便秘、夢でうなされて騒ぐ、臭いを感じなくなるなどは運動症状に先立って生じていることが知られるようになりました。
パーキンソン病の診断は、これまでの症状の経過をよく聞いて、現在の症状を注意深く観察することが最も重要です。通常の血液検査や頭部MRI検査などには特に異常はありませんが、数年前からこの病気の特徴的な心臓の自律神経障害や脳内で低下するドーパミンを調べる画像診断が用いられるようになり、診断の精度が上がっています。
治療は不足するドーパミンを補う薬物療法が主体になります。治療薬はいろいろな効き方をするので、各種の薬の中からその人の症状と日常生活、社会生活の状況に合わせて選択する必要があります。長く付き合っていく病気なので、根気よく治療を続ける必要があります。
手足がふるえたり、身体の動きがぎこちなくなった場合には、かかりつけの医師にパーキンソン病の心配を相談して、必要な場合は脳神経系の病気を専門に診療している神経内科で診てもらってください。