2018年5月
【水曜】自動車事故による外傷性頚部症候群
外傷性頸部症候群とは、いわゆる「鞭打ち損傷」といわれている傷害のことです。
鞭打ち損傷という病名は、患者さんに誤解を生みやすい病名であり、現在は、医学的な頚椎(けいつい)捻挫や外傷性頚部症候群という病名を使うようになっています。頚(くび)の痛みだけではなく、難聴、めまい、耳鳴り、頭痛、物忘れ、吐き気など多彩な病状が、時間の経過とともに様々に現れるのが外傷性頚部症候群の特徴です。頚の骨や関節、筋肉、神経の損傷だけではなく、心理的な要素も関連しています。
症状から次の5つの段階に分類されます。
段階0:頚に症状の訴えなし
段階1:頚に痛み、コリの訴えがあるが、客観的所見なし
段階2:頚に症状があり、運動制限あり
段階3:頚の痛みと、神経の障害徴候あり
段階4:頚に症状あり、骨折などを伴う
骨折などがあれば、手術が必要な場合もありますが、頚の骨が折れたりしていないか、頚椎の神経が障害されていないかを、整形外科の医師に診断してもらい、段階1~2の軽症であるかどうかの見極めをつけてもらいましょう。
このうち段階1~2の軽症のものは「頚椎捻挫」とも呼ばれます。頚椎捻挫で痛みのきつい初期は、頚を安静にし、痛み止めの薬を飲むことも必要です。しかし痛みが軽くなれば、早期に運動療法を行う方がよいのです。
頚椎捻挫は、治る外傷です。重症な所見がないと診断されれば、早期に通常の生活にもどり、首や肩をよく動かして、仕事に励むことが治療です。社会的、心理的な要素が頚椎捻挫を治りにくくしている要因です。
くよくよと悩まず、必ず治ると安心して、事故前と同様の活動性を維持し、職場復帰することが大切です。