2018年9月
【木曜】内視鏡による消化器手術
わが国のがん患者数の1位は大腸がん、2位は胃がんです。がん死亡数も1位肺がん、2位大腸がん、3位胃がんとなっており、わが国では大腸がんと胃がんの予防と早期発見・治療対策が最も重要な課題となっています。
胃がんは、胃カメラの進歩により早期で見つかるケースが多くなっています。胃カメラを用いて特殊な手術器具を使い早期胃がんをひとかたまりに剥ぎ取る手術(粘膜下層剥離術・ESD)が確立され、2cm以下の早期胃がんで、リンパ節転移のないものに対して数多く行われています。原因の99%はピロリ菌です。対策として、除菌治療により胃がんの発生率を1/3に減らすことと、除菌治療後も胃がんの危険性が高いので定期的な胃カメラが推奨されています。
また、1位の大腸がんは食生活の欧米化により急速に増加しました。95%は大腸ポリープを経て発症します。大腸ポリープは10mmを超えると高い確率でがん化することが分かっています。ポリープの段階や、ポリープの一部がガン化した早期の段階で大腸カメラによる手術(大腸ポリープ・粘膜切除術・EMR)を受けることで、ポリープや早期大腸がんの予防が可能です。50歳(大腸がんの家族歴ある場合は40歳から)を過ぎたら、健診の便検査が大丈夫でも一度大腸カメラを受け、ポリープがあれば切除することが推奨されています。ポリープ切除後も定期的な大腸カメラで新しくできたポリープの切除を続けることでポリープのないきれいな大腸(クリーンコロン)の状態を保ってください。
なお、粘膜下層剥離術は3cm以下の早期食道がんで、リンパ節転移のない症例に対する治療としても確立され数多く行われており、最近では大腸の大きなポリープ、早期大腸がんに対しても試みられるようになっています。
他にも内視鏡を用いた治療で普及しているものとして、誤って飲み込んだ硬貨や入れ歯などを取り出す異物摘出術、肝硬変患者さんの食道に出る血管のこぶ(食道静脈瘤)を消失させる硬化療法、胃潰瘍などの消化管出血に対する止血術などがあります。また、手術ができない食道がんや大腸がんのために、消化管の細くなった部分を広げて金属チューブをはめ込む消化管ステント留置術も考案されています。また、特殊なカメラを用いて、十二指腸にある胆管の出口を切り広げ、胆管や膵臓の結石を取り除く手術(胆管結石摘出術、膵石摘出術)、手術できない胆管がんや膵臓がんで胆管がふさがって生じた黄疸を取り除くために胆管に金属チューブをはめ込む手術(胆管ステント留置術)も普及しています。
内視鏡を用いた治療・手術は開腹手術に変わる体に負担の少ない手術としてこれからもますます発展を遂げていくと思われます。皆さんも胃カメラや大腸カメラなど内視鏡の恩恵を受けて元気で長生きをしましょう。町の消化器内視鏡専門医にご相談ください。