2019年4月
【火曜】手のしびれ~手根管症候群~
手の病気のうち「手根管(しゅこんかん)症候群」は手首の手のひら側にある、骨と靭帯に囲まれた「手根管」と呼ばれるトンネルの中を通る「正中神経」が圧迫されて起こる病気です。
症状は、親指から薬指にしびれが起こり、ひどくなると痛みが出ます。親指、人差指、中指を中心とした痛みやしびれは明け方に強く生じ、手を振ることで楽になることが特徴です。小指にはしびれが出ません。
症状が進むと、親指の動きが悪くなって、縫いものやボタンをはめるなど、つまむ動作ができにくくなります。
病気の原因は、仕事あるいは日常生活における手の使い過ぎや、手首の関節骨折の後遺症、腫瘍、腱鞘炎、透析、糖尿病・関節リウマチなどや、神経や筋の異常です。女性では、妊娠出産期や更年期のホルモンの不調による発症のピークがあります。
診断は、手首を指先などで叩くとしびれや痛みが指先に響くかどうかを診ます。また、手首を直角に曲げて、手の甲をあわせて1分ぐらい保持し、しびれや痛みが悪化するかどうかを見ます。親指の付け根の筋肉がやせているかどうかも診ます。補助検査として、電気で手根管の神経の流れが悪くなっているかを確認する筋電図検査があります。首をひねると手がしびれるなどの、手首以外の異常がないかも確認することが重要です。
治療は、初期には消炎鎮痛剤やビタミンB12などの飲み薬や、炎症を抑える薬の注射などで良くなることもあります。運動や仕事をひかえることやシーネ固定などの局所の安静も効果的ですが、ある程度進行すると、手のひら側にある靱帯を切り離す手術が行われます。
進行した手根管症候群では、指のしびれだけでなく、つまむ動作の障害が強くなるので、機能を回復する手術が必要となることもあります。近年、内視鏡を用いたり傷口の小さな行う手術(鏡視下手根管開放術、直視下手根管開放術)で、従来の手術とほぼ同様の効果が得られるようになりました。
そのほか、手のしびれは手根管症候群のような末梢神経の障害だけでなく、脳・脊髄といった中枢神経のいずれに異常が起きても起こります。また、脊髄の異常と手根管症候群が同時に起こることもあります。
しびれをそのままにしないで医療機関を受診して、進行する前に診断や治療を受けましょう。