2019年10月
【金土日】高齢者の皮膚のかゆみ
高齢者の方が皮膚のかゆみを訴えられるのはきわめてありふれた現象です。
その原因の1番はドライスキン、すなわち皮膚の乾燥に由来する場合です。特に秋から冬になると、気温の低下に伴って空気が乾燥してきますので、高齢者の多くの方がドライスキンの状態で受診されます。
ドライスキンとは、老化によって皮膚の一番上にある角質層の水分含有量が低下して生じた、潤いのない肌を言います。気温および湿度が上昇し、汗をかきやすくなる梅雨頃から夏には、通常ドライスキンはかなり軽快してきます。
ドライスキンの対策としては、特に乾燥が強まる冬には、保湿剤として使われるヘパリンに似た化学物質を含んだ軟膏や、ワセリン、尿素軟膏、あるいはセラミドを含んだ軟膏など、乾燥を防ぐ塗り薬を定期的に使うことが重要です。また、激しく掻きむしると湿疹様変化を起こしてしまいますので、かゆみが強い場合には、これらに加えて、かゆみを止める飲み薬が望まれます。さらに、入浴の際に石鹸で擦りすぎると、人の皮膚の脂などによってできていて、乾燥など肌を保護する、「皮脂膜」を破壊する原因となりますので、必要以上に洗わないように気をつけて、お湯の温度も低めに設定する方が良いでしょう。
高齢者の皮膚のかゆみの2番目の原因として、内臓の異常によるかゆみが考えられます。肝炎や肝硬変・腎不全・糖尿病・甲状腺機能異常・貧血・内臓悪性腫瘍などの、様々な病気の際に皮膚のかゆみを伴う場合があります。従って、季節に無関係にかゆみが生じ、保湿剤を塗ったりかゆみ止めの薬を飲んでも症状が軽快しない場合には、内臓の異常によるかゆみの可能性を疑って、全身の精密な検査を行う必要があります。
その他、血液の流れをよくする薬や血圧を下げる薬などといった飲み薬によるかゆみや、ストレスなどの精神的な反応に伴ってかゆみが生じる場合もあり、高齢者の皮膚のかゆみの原因として様々なものが考えられます。
このようにかゆみが持続する場合には、原因の解明も含めてかかりつけの医師または皮膚科を受診されることをおすすめします。