2019年10月
【水曜】スポーツと疲労骨折
カレーライスなどを食べるときに使う金属のスプーン。このスプーンの柄の部分を何回も繰り返し曲げると、折れてしまいますね。これを金属疲労といいます。
疲労骨折もこれと同じです。スポーツ活動に多い、走る、跳ぶ、などの動作を繰り返し行っていると、骨に普通のレントゲンでは映らない小さなヒビが入り、そのヒビが自然に修復される前に再び同じ動作を行うことで、やがてレントゲン写真で確認できるような骨折となるのです。
10代の若い人、特に中学生や高校生に多く見られます。運動部に入って一生懸命運動を始めた中学1年生、校内マラソン大会等で急に走り始めた高校1年生などに起こりやすいのです。発育期のスポーツ選手、特にまだ十分な技術と骨の強度がない子どもが、短期間に集中的なトレーニングを行う事によって発生するのです。
スポーツ指導者の先生方は、子どもたち一人ひとりの身体状況を考えて、同一部位に同じ力が加わるような単調なトレーニングをさせないようにしなくてはなりません。
疲労骨折は痛みに特徴があります。打撲した覚えもないのに、急に痛みが出たり、徐々に痛みが出たりします。発症後の1週間、痛みは運動中にだけ起こり、休息すると消失します。しかし、そのまま激しい運動を続けると、やがて運動痛は強くなり、休息をとっても鈍痛が残ってくるのです。
体重のかかる足に起こることが多いです。スネの骨である脛骨と腓骨、足の甲の骨である中足骨によく見られます。しかし、痛みが出た直後のレントゲン検査では骨折線が見つからないこともよくあります。数週間後のレントゲン検査で、ようやく骨折の所見が確認されることも多いのです。
治療の原則は安静にして、3-4週間スポーツを中止します。普通の骨折と違って、ずれることはないので、ギプス固定をする必要はありません。局所安静を保ちながら経過観察をして、レントゲン検査で骨がくっつくのを待ちます。
再発予防は、原因を取り除くことが大切です。運動靴のクッションをよくすること、硬い道路を走らないこと、全身の筋肉トレーニングやストレッチが必要です。練習再開の際には、徐々に練習量を増やして体を慣らしていくことが大切です。