2019年11月
【火曜】親知らずは抜くべきか
親知らずを抜くべきか、残しておくべきかというのは、長い一生の間には、親知らずを残しておくことにより、何かの役に立つと考えられる方が、いらっしゃるからだと思います。よって親知らずを抜かずに残すことを、全面否定はしません。ただ、親知らずを抜くべきという歯科医師の考え方もありますので、今回はそれについてお話をします。親知らずとは、前歯の中央の歯が1番と呼ばれるのに対し、左右それぞれの奥の8番目の歯のことで、8番の歯という呼ばれ方もします。ゴリラなどの類人猿では、顎が十分に大きく、問題なく歯が生え揃っています。これに対して、人間の顎は小さいので、親知らずの生える場所が確保できず、顎の骨の中に埋まったままになったり、傾いたりしていることがあります。
そういう場合は親知らずの周りの歯肉が腫れたり、炎症を起こしたりします。この場合は、抗生物質による治療が必要になりますが、特に妊婦さんの場合だと、薬を飲みたくない患者さんもあるかと思います。また無理な形での親知らずは、長い期間の後、7番の歯を押して、歯の高さを高くしたり、斜め内側に倒したりしてきます。家で言えば、柱に相当する歯の高さを変えてしまったり、歯並び全体を悪くします。あるいは、本人が気づかないうちに下あごの動きが悪くなったりします。更に首の凝り、肩凝り、その他身体のバランスにも影響がきます。これらは特に、下あごの親知らずが影響しますが、上あごの親知らずも、咬筋という咬む筋肉が近くにありますので、噛む力に微妙に影響して、悪い噛み癖がついたり、首の凝り、肩凝りにもつながります。
首の凝り、肩凝りぐらいと思われるかも知れませんが、これは筋肉のバランスの崩れであり、万病のもとと言っても過言ではありません。なぜなら身体の末端でのそういう情報は、脳を司る神経に送られ、自律神経に影響を及ぼすと考えられるからです。また全身の骨の関節のずれを起こして、長い期間の後に、身体をむしばんでいくこともあります。
まとめますと、親知らずの周りの歯肉の炎症や、親知らずが接触している歯が虫歯になったり、歯並びが悪くなったり、また自律神経や関節あるいは筋肉の動きにも、影響を与えますので、気になる方は歯科医療機関を受診してください。