2020年1月
【水曜】下肢静脈瘤の話
心臓へ戻る血液が通る、静脈には血液が逆に流れないようにする弁があります。長時間の立ち仕事や妊娠時に、足の静脈に大きな圧力が加わると、この弁が傷つき、その結果として静脈の流れが悪くなり、逆流して足の静脈が腫れてきます。これが下肢静脈瘤です。
軽度のうちは見た目が気になる程度ですが、長い経過のうちに静脈が腫れて、足のだるさ、痛み、かゆみ、こむら返りが見られるようになります。さらに放っておくと、足の皮膚が茶色くなったり、皮膚に潰瘍ができたりします。また静脈瘤の中に血の塊である血栓ができて、急に赤くなり痛みがでて、歩けないほどになることもあります。またその血栓が肺に飛んでいくことがあり、肺動脈がふさがって重い呼吸困難になることもあります。これは最近ではエコノミークラス症候群として知られています。
治療法は初期の段階では医療用弾性ストッキングを履くことをすすめていますが、履きにくいこと、また夏場は蒸れることから手術を希望される方が多くなります。中等度以上の場合は、ここ数年でよく行われるようになってきておりますレーザー治療または高周波治療が行われています。この治療は下肢静脈に熱を加えて閉塞させる方法です。またこの間、下肢静脈瘤を安全性の高い特別なグルー(医療用接着剤)を用いることで問題のある血管を瞬時に塞ぐことが可能になるグルー治療が可能になってきています。血管を焼かない、つまり血管内がヤケドになる状態を作らないので、術後の炎症や痛みが軽減し、煩わしい弾性ストッキングの着用は不要とこれまでの治療の問題点をクリアできる新しい治療です。ただしこの治療は高度な技術と知識が必要であり、専門的に行っている施設は限られています。いずれにしても、かかりつけ医に相談し、必要であれば専門医を紹介してもらってください。