2020年2月
【火曜】妊産婦の歯科治療助成制度について
妊娠中は亢進した女性ホルモンの影響に加え、つわりなどによる口腔清掃の困難さ、嗜好・食習慣の変化によって口腔衛生環境が悪化するため、虫歯や歯周病、妊娠性歯肉炎、妊娠性エプーリスなど、様々な口腔疾患にかかるリスクが高まります。さらに、妊婦の歯周炎は早産・低体重児出産、妊娠糖尿病ならびに妊娠高血圧症候群と関連することが報告されており、元気な赤ちゃんの出産をサポートする上でも、妊婦に対する口腔衛生管理は絶対に必要になります。
また妊産婦への歯科治療では母子の安全が第一に優先され、無理をしないことが原則ですが、切開、抜歯などの出血を伴う処置や、麻酔、投薬などの際、専門的な知識や安全に対する細心の注意と特別な対応、配慮が必要です。
妊婦と胎児を守る環境を整備するために、医科・歯科への診療報酬上の評価は不可欠であり、「妊婦加算」の対象を歯科にも拡充し、診療報酬で適切に評価する必要があります。しかし評価は患者の負担に跳ね返る制度にもなっており、2018年の診療報酬改定で医科に新規に導入された「妊婦加算」は、ただでさえ重い窓口負担に加算が上乗せされることに国民の批判が集中し、1年を待たずに凍結されました。
正当な評価とともに、「子供医療費助成制度」のように少子化対策として助成制度を充実させることで、妊婦やお腹の赤ちゃんを守ることに繋がり、安心・安全に受診できる大きな手助けとなります。安心・安全かつ適切な歯科治療を行い、妊婦自身がセルフケアとマイナス1才児からの予防の重要性を認識できれば、出産後も母と子。さらに将来的には家族のお口の健康へとつながっていきます。
「妊産婦の医療や健康管理などに関する調査」では、産婦人科以外の受診先として、内科についで、歯科が2番目に高くなっており、歯科への高い受診傾向が見られます。窓口負担を気にして受診をためらう妊婦さんも、医療費助成制度を妊産婦に拡充することで、治療費の心配をせずに歯科にかかりやすくなります。兵庫県保険医協会でも、子供を産み育てやすい兵庫県にするために、すべての妊産婦が経済的な不安なく受診できるよう、「妊産婦医療費助成制度」の創設を求めています。