2020年5月
【月曜】蚊が飛ぶように見える"飛蚊症"
眼科を受診される方の中には、点や紐や膜のようなものが、蚊のように目の前を飛んで見えるという訴えをされる方が多くいらっしゃいます。この「飛蚊症」と呼ばれる症状の原因と対処法について、お話しいたしましょう。
飛蚊症は、眼球の中にある、硝子体(しょうしたい)と呼ばれる透明なゼリーの中にできた濁りが、網膜というスクリーンにその影を映したものです。この硝子体の中の濁りの原因として、病的なものと、病的でないものがあります。
多くの場合は病気ではなく、硝子体の中にある正常な繊維や細胞の成分が、光の加減で影になって網膜に映る「生理的飛蚊症」と呼ばれるものです。これらは大なり小なり、年齢とともにみられるようになり、近視の方は少し出やすいかも知れません。このようなものは急に気づくことはあっても、その後は大きく変化することは少なく、治療の対象にはなりません。
一方、飛蚊症の症状から始まる、治療が必要な病気もあります。まずは網膜剥離が有名です。それ以外にも、裂孔原生網膜剥離や、硝子体出血、網膜裂孔や、ぶどう膜炎のような眼の中の炎症などがあります。このような場合には、飛蚊症が日を追うごとにひどくなったり、かすんだり、光が見えたり、膜が揺らいで見えたり、視野が欠けて見えるなどの症状が出てくることもあります。そのままにしておくと視力が低下することがありますから、レーザー光線を当てたり、手術や薬などで早急に治療をする必要があります。
このように、飛蚊症の原因はピンからキリまであります。早急に治療をしなければならないか、経過を見ていても良いものかどうかを判断するために、早めに眼科を受診し、手遅れにならないようにすることが大切でしょう。