2020年8月
【水曜】 便に血が混じる病気 ~潰瘍性大腸炎~
便に血が混じる病気はたくさんありますが、今回は、潰瘍性大腸炎という病気についてお話させていただきます。
潰瘍性大腸炎は、国が指定する難病のひとつです。日本全国に約16万人近くの患者さんがいます。数年前から症状の軽い患者さんは難病から外され、一般の保険診療で治療することとされています。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜がただれて、びらんや潰瘍がたくさんできる炎症性の病気です。便に血がまじる、下痢が多い、お腹が痛くなることが多いなどの症状があります。発症年齢のピークは男女とも25歳から30歳ですが、若年層から高齢者まで発症します。男女差はありません。
病気の原因は、免疫異常、腸内細菌の異常、食生活などが挙げられていますが、現代医療をもってしても明らかにされていません。遺伝性も見られません。
よくある症状は、下痢です。回数が多くなり、腹痛や血便が見られます。重症化すると発熱、体重減少、貧血、関節痛も併発します。
診断は、症状の経過と病歴を聞くことから始まります。便潜血反応が陽性かどうか。地血の混じった下痢を起こす細菌感染症との鑑別も必要です。診断の確定は、大腸内視鏡にて大腸粘膜の状態を診察し、粘膜のただれの程度や範囲を検索し、組織検査をします。潰瘍性大腸炎は肛門の直上から直腸に向かって粘膜のただれが広がっていくタイプが多いです。粘膜病変の広がり方により、全大腸炎型、左側(さそく)大腸炎型、直腸炎型と分類されます。また炎症の程度により、活動期や寛解期に区別されます。
治療法としては、飲み薬や注射薬も種々開発されています、ただしどうしても薬物治療に反応しない方で、重症の例は、大腸を全部切除する場合もあります。さらに癌性病変を合併してくることもあるので、定期的な大腸検査が必要です。
一生を通じて、経過をみていく病気です。生命予後は健康な方と変わりません。諦めず、根気よく病気と共存していく姿勢が大切と思います。