2020年9月
【火曜】 摂食・嚥下障害と誤嚥性肺炎
まずは摂食・嚥下、つまり食べ物を食べるということから説明しましょう。
食べ物を食べるということは、食べ物を目の前にした時にそれが食べ物であると認識することから始まります。続いて、その食べ物を口まで運び、飲み込みやすい形に咀嚼します。今度はそれを喉まで送り込みます。食べ物は食道を通って胃に入っていきます。この一連の過程が食べ物を食べるということです。
さて、摂食・嚥下障害はどうやって起こるのでしょうか。
先程の、一連の過程のどの段階でも起こりえます。つまり、歯がなくて噛めない、唇の動きが悪い、舌の動きが悪い、喉の動きが悪い、口が乾燥している、脳血管疾患による麻痺など、様々な原因で摂食・嚥下障害は起きてしまいます。
ところで、喉には気管という空気の通り道と、食道という食べ物の通り道があるのですが、食べ物が間違って気管に入り込んでしまうことがあります。これを誤嚥といいます。そして、口腔内細菌を含んだ唾液および食べ物が、気管に入り込んでしまい、肺で感染・炎症を起こしたもの。これを誤嚥性肺炎といいます。誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因の上位に位置する恐ろしい病気です。
では、誤嚥を起こしたら、必ず誤嚥性肺炎になってしまうのか。そんなことはありません。実は、健常者もたびたび誤嚥を起こしています。それでも肺炎を発症することはありません。理由は三つあります。仮に誤嚥したとしても、①力強い咳ができれば、一旦は気管内に入り込んだものを再び気管外に出すことができます。②口の中がキレイだと、細菌数が少なく、感染リスクも低いです。③免疫力が感染力を上回っていれば、感染しません。
では、何をどうすれば良いのか。まず、栄養状態が悪いと免疫力が低下してしまいます。そのため誤嚥させることなく安全にしっかり食べることが大切です。
詳細は短い時間で説明しきれませんが、椅子・テーブルなどの食環境を整え、食事するときの姿勢を整える。箸・スプーン・器などの食器を整える。能力に合った適切な食形態にする。機能低下を予防するためのリハビリテーション。口腔内を清潔に保つため及び摂食・嚥下機能の回復のための歯科治療...といったことが必要になってきます。