2020年12月
【金土日】PTSD予防と新型コロナ
PTSDとは「外傷後ストレス障がい」のことで、阪神淡路大震災以来注目されるようになった精神科の病気です。肉体的及び精神的な衝撃に長い間とらわれてしまう状態、すなわち「トラウマ」が原因で、これは大きく2種類に分けられます。一つは、事件や事故に遭遇するとか、特に性的被害や性的虐待に遭遇すること、あるいは、子どもが親などの養育者から身体的・精神的虐待を受けるなどの個人的体験です。もう一つは、地震・津波・豪雨・火事など大災害に遭遇することで、いずれにしても命を脅かされるほどの恐怖の体験がトラウマになります。そのとき、肉体的・物質的なサポートだけでは不十分で、精神面のケアも重要だと認識されるようになりました。
以下にあげる3つの症状が揃って1ヵ月以上続いた時に、診断が確定して専門家による治療が必要です。
1つ目は、悪夢や些細な刺激でトラウマの記億が鮮明によみがえる、「フラッシュバック」という現象です。まるでその場にいるような恐怖にとらわれます。
2つ目は、トラウマと関連した話や場所や音などの刺激を避ける「回避行動」です。物事への興味・関心が乏しくなり、感覚や感情が麻痺したように感じます。
3つ目は、睡眠が障がいされたり、些細なことで怒りが爆発したり、激しく警戒心や恐怖心を抱く「過覚醒」という状態です。神経過敏で情緒不安定になります。
治療には、抗不安薬や抗うつ薬などを中心とした薬物治療と同時に、カウンセリング等の精神療法が必要です。運動療法が有効な場合もあります。
ところで、このところ世界中を混乱に陥れている新型コロナに関わる状況がトラウマになる可能性について、特に予防的な側面を考えておきましょう。
PTSD全般に言えることですが、トラウマになる状況で強い不安を抱くことは、異常事態での正常な反応であるという理解を持つことが、まず大切です。かつ、過去に何らかのトラウマ体験があると、些細なことが大きなトラウマとなってPTSDを発症することがあるのでこれも心得ておきましょう。
PTSDの予防や治療では、周りの人が状況を理解し支えてくれるかどうかが大変重要で、治療の効果とその予後に大きく影響します。PTSDの発症を予防するため、命の危険が付きまとっている新型コロナに関しては特に、睡眠を初めとした生活習慣を大切にして免疫力を高め、周りとの信頼できる繋がりを大切に孤立せずに過ごしましょう。