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健康情報テレホンサービス

2021年3月

【月曜】 子宮内膜症とは

 子宮内膜は子宮の内側を覆う粘膜で、妊娠が成立しなかった場合に月経出血として剥がれていく組織です。子宮内膜症は、その子宮内膜やそれに似た組織が、子宮内膜以外の場所で女性ホルモンの影響を受けて発育する疾患です。
 子宮内膜症は卵巣や子宮・卵巣の表面、子宮筋肉内に発生しやすく、卵巣に発生すると血液が排出されず膨らんでいき、血液が風船のように貯まった袋状の病巣、すなわち「チョコレート嚢胞」となります。20代から40代女性に多くみられ、月経周期に合わせて病変が増殖し、周囲の組織と癒着を起こすため様々な痛みをもたらします。90%の人に月経痛があり、その他に下腹痛、排便痛、性交痛などがあります。また、30%の患者さんに不妊がみられます。
 治療法は大きく分けて、手術療法と薬物療法があり、ライフステージによって最適な治療法を選択することが重要です。
 「チョコレート嚢胞」のように病変がはっきりしている場合は手術を考慮します。年齢や妊娠希望の有無により、病巣のみを切除するのか、根治的に卵巣ごと切除するのかを決めます。経過観察する場合には、年齢とともに癌化のリスクが上がるため注意を要します。
 薬物療法には鎮痛剤などの対症療法と、病気の進行を止め病巣を萎縮させるホルモン療法があります。ホルモン療法には、低容量ピルのほか、黄体ホルモン受容体に作用する薬(プロゲスチン製剤)、下垂体ホルモン受容体に作用する薬(GnRHアゴニスト/アンタゴニスト製剤)などがあります。
 低容量ピルは、効果がマイルドなため比較的軽症の場合に処方されます。長期に内服できますが、血栓症などの副作用がまれにあるため専門医の管理が必要です。
 黄体ホルモン受容体に作用する薬(プロゲスチン製剤)は痛みが比較的強い場合に使用します。長期投与で骨密度の低下が少しみられることがありますが、2020年に発売された半分量の製剤の場合にはその心配がありません。
 下垂体ホルモン受容体に作用する薬(GnRHアゴニスト/アンタゴニスト製剤)は、偽閉経療法とも呼ばれ、女性ホルモンの抑制効果が強いため投与期間は最大6ヶ月となっており連続した治療はできません。骨密度の低下や更年期症状がみられるため手術前や閉経を間近に控えた短期型の治療になります。
 子宮内膜症は生殖年齢に発生し閉経まで長期的な治療戦略が必要な慢性疾患ですので、ライフステージに合わせて最適な治療法を相談できるかかりつけ医を持ちましょう。

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