2021年4月
【水曜】 肩関節の脱臼
肩関節は人体の関節中で最も様々な方向に大きな可動域を持つ関節です。しかし、その反面、脱臼しやすいという欠点があります。肩関節脱臼は人体の関節で最も起こりやすく、これまでの様々な報告から100人に1~2人くらいの割合で発生しています。
肩関節が2回以上脱臼を繰り返した場合を、反復性肩関節脱臼と呼びます。「脱臼癖がある」と言っている方がよくおられますが、まさにこの状態になっています。この症状はいわゆる癖ではなく立派な肩関節の障害です。
肩関節の安定には肩の関節包と呼ばれる関節の袋、靭帯、上腕骨や肩甲骨の骨の形が影響します。脱臼することによりこれらの組織が壊れます。また、脱臼を繰り返すとこれらの組織をさらに破壊してしまいます。結果として脱臼を繰り返す度にどんどん脱臼しやすい肩関節になっていきます。
初回脱臼であれば理学療法を行います。しかし、初回脱臼であってもご本人の希望や、再脱臼をすると職務に大きな支障が出る職業(自衛官、警察官、消防士等)に仕れている方は手術を選択する場合があります。
反復性肩関節脱臼の方は手術が必要となる場合が多いと思います。筋力トレーニングで周囲の筋肉を強化するなどとよく言われますが、多少の安定感は得られても、外力が加わったときにも外れない肩には決してなりません。また、手術前に脱臼を繰り返した回数が多いほど手術をしてもまた脱臼してしまうリスクが高まると言われています。脱臼をしたらなるべく早期に治療を始めるのが理想です。
40-50歳くらいになると外れにくくなりますが、中年期以降で脱臼を繰り返すと腱板断裂など新たな損傷を生じたり、将来的には変形性関節症になったりすることがありますので、やはり活動性の高い時期に手術できちんと治しておいたほうが良いでしょう。
以上のことから肩関節脱臼は早めの診断と、原因の評価が不可欠です。放置せずに早めに整形外科専門医を受診してください。