2021年5月
【木曜】 難聴あれこれ
難聴の症状として聞こえにくいことだけを考える人が多いようですが、それ以外にも気を付けるべき症状があります。耳鳴りは難聴と別物ではなく、難聴が原因で起こることが多い症状です。耳鳴りが気になって難聴を自覚しないこともあります。また、「耳の詰まった感じ」や「音が響く感じ」も難聴の症状の1つです。このように難聴の症状は聞こえにくさだけでなく、耳鳴り、耳閉感などもあることにまず気を付けてください。
次に、年齢順に気を付けるべき難聴を考えてみます。
生まれてすぐの難聴は、先天性難聴といいます。言葉を正常に発達させるには周囲の人の言葉を聞き取ることが必要なので、早期に診断し、早期に補聴器をつけたり、重度の難聴の場合は人工内耳の手術を受けるなどの治療が必要となります。
幼小児期では、風邪の後の急性中耳炎や滲出性中耳炎による難聴が多いです。これらが長い間治らずに悪化すると骨を溶かす真珠腫性中耳炎になることがあるので注意が必要です。
中学生以降になると急性中耳炎等にはかかりにくくなりますが、ヘッドホンによる慢性音響外傷、いわゆる「ヘッドホン難聴」が増えていきます。毎日のようにヘッドホンで大きめの音を長時間聞くことで、徐々に聞こえが悪くなります。慢性音響外傷は良い治療法がないため、音を小さくして長時間聞かないなどの予防が大切です。
成人の難聴で注意を要するのが、突発性難聴です。この病気はある日突然片耳が難聴になります。めまいや耳鳴りを伴う時もあります。原因はよく分かっていませんが、聞こえの神経への血液の流れが悪くなっていることは間違いないようです。そのため治療が遅いと効果が期待できません。できるだけ1週間以内に耳鼻科を受診して下さい。
最後に高齢者の難聴です。加齢に伴って難聴が進むのが老人性難聴です。これは両耳で起こります。難聴により会話しづらくなると、人とのつながりが億劫になり、引きこもり気味になります。最終的にはうつ病や認知症の発病につながる可能性もあります。老人性難聴は老化現象であるため内服飲み薬などの治療では良くならず、補聴器で対応します。よほど聴力が悪くならないと補聴器を付けることを考えない人が多いですが、聴力が極めて悪い人につけても効果は出にくいです。それは音刺激が脳に入らない状態が長く続いて脳の機能が低下しているためです。このことから老人性難聴に対しては、難聴が軽い時から補聴器をつけることが有効とされています。