兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2021年6月

【木曜】建物解体によるアスベスト

 アスベストは、鉱物の一種であり、石でありながら軽い綿状の性質を持つことから、石綿とも呼ばれる物質です。加工しやすいことに加えて耐火性・断熱性が高く、一時期は建物の建築に多く使用されていました。しかし、アスベストを吸いこむと、肺がんや悪性中皮腫などの健康被害を引き起こすことが分かっています。こうしたアスベストによる健康被害は時代と共に変化しています。今でも製造や建設に従事していた人たちの発病が注目されていますが、2006年にアスベストの使用が禁止されて以来、アスベストが飛び散る原因は、アスベストが使用された建物が不適切に解体、改修されることにあるとされています。また、輸入されたアスベストの約8割が建物に使用されており、少子化や建物の老朽化によって学校などの公共建物の解体が増えている現在、私たちの身近にアスベストの危険が存在しているのです。

 アスベスト繊維は髪の毛の5,000分の1ときわめて細く刺激もないため、吸い込んだことに気づく人はいません。従って、飛び散らせないための厳重な注意が必要となりますが、特に解体前にアスベスト使用を調べる事前調査が重要となり、公正かつ適切に行われることが求められます。役所では届けられた事前調査結果を参考にして、安全な除去作業を監督指導する仕組みになっています。しかし現実は、役所の監督指導は十分ではなく、仮に業者による「アスベスト隠し」があってもそれを見抜くことはできず、結果としてアスベストを飛散させています。

 このような欠陥を補うためには、業者や役所を過信するのではなく、住民の協力が必要となります。身近で行われる建物の解体や改修工事に注目して、常に監視していることをアピールすることが大切です。堂々と、現場の気になる箇所や掲示板の内容をチェックして写真に収めておきましょう。現場の人に睨まれても気にしないで下さい。疑問があれば、役所の環境保全課に電話で「○○の解体工事でアスベストは大丈夫か」と伝えることも効果的です。電話したことにより、それまで不十分な対策しかとられていなかった作業が改善されることもあります。

 アスベストによる健康被害は、中皮腫や肺ガンなど重症なものが多く簡単に発見できるものではありません。また、20~50年の長い潜伏期の後に発症するため、どうしてもうやむやのまま放置されています。一人でも多くの住民が問題意識をもって、身近な所から行動することが求められています。子どもたちの将来のために健全な社会を確保するために頑張りましょう。

 一人の百歩より、百人の一歩を。

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