2021年7月
【水曜】 B型肝炎のはなし
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することでおきる肝臓の炎症です。昔は母子感染といってB型肝炎のお母さんから赤ちゃんにうつることが多かったのですが、1986年より母子感染予防のため生まれた赤ちゃんにワクチンや免疫グロブリンを接種し始めてから母子感染は激減しました。つまり現在35歳以下の人には母子感染が原因のB型肝炎患者さんはほとんどいません。
また2016年以降は生まれる全ての赤ちゃんにワクチンが接種されており、現在の新規感染の多くは性交渉による成人間の感染に移行しました。B型肝炎ウイルスにはいくつかの種類がありますが、なかでも欧米型が増えており、この型はひとたび感染すると10%程度と比較的高率に慢性化します。こうして慢性肝炎になった患者さんの一部が、いずれ肝硬変や肝がんを発症します。
残念ながら現在B型肝炎を完治させる治療方法はなく、最も大切なのは感染予防と早期発見です。感染してもほとんどの場合無症状であり、また肝機能が正常の患者さんもたくさんおられるので、「症状がないから大丈夫」とか、「肝機能が正常なので様子をみよう」いう考え方は極めて危険です。無料の肝炎ウイルス健診を各自治体が実施していますので、これまで一度も検査を受けたことがなければ電話やホームページ等でぜひご確認ください。そしてB型肝炎ウイルス陽性の場合絶対にそのままにせず、お近くのクリニックを受診し今後の方針につきお気軽にご相談ください。早期発見をして適切なフォローや治療を受ければ、過度に恐れる必要はありません。
肝臓の炎症が弱く、ウイルス量が少なく、肝臓が柔らかい患者さんは経過観察のみとなりますが、逆に肝炎が強くウイルス量の多い患者さんや、既に肝臓が硬くなりかけている場合は治療を受けて下さい。昔はインターフェロンという注射薬が治療の主流でしたが、現在は内服薬を自宅で飲み続けるのが主流です。B型肝炎ウイルスの増殖を抑える薬で、継続して服用することで肝硬変や肝がんになるリスクを大幅に下げられることが既にわかっています。
B型肝炎はわが国に110~140万人の患者さんがいると推定されており、いわゆる国民病のひとつです。決して他人事とは思わず、必ず一度は検査を受けてください。