2021年7月
【火曜】 介護を充実させ個人にあったサービスを
今年4月に介護報酬が改定されました。介護報酬とは、介護保険によるサービス内容とそれに対する対価を定めているもので、3年おきに改定が行われています。
今回の改定により、厚労省発表で介護報酬が0.7%引き上げられました。しかし、この引き上げ幅では、これまでたび重なる介護報酬の引き下げで疲弊した介護の現場を立て直し、介護職員の処遇改善や介護サービスの向上をはかるには全く不十分です。また、新型コロナ対策のための特例として、今年9月までは介護報酬に0.1%の上乗せをするとしていますが、このわずかな上乗せでは新型コロナへの感染対策を十分に行うこともできません。恒久的かつ大幅な引き上げが必要です。
しかも、介護保険の根幹である訪問介護については、わずか1単位しか引き上げられず、その他の報酬もほとんど引き上げがされていません。介護療養病床に至っては8~9%もの大幅な引き下げとなっており、介護医療院など他施設への転換を強要する改定となっています。これは新型コロナ感染症が広がる中で献身的に施設サービスを行ってきた介護療養病床の職員の努力を踏みにじるものであり、介護療養病床の廃止は撤回し、必要な施設療養が受けられるようにすべきです。
また、今回の改定では「科学的介護情報システム(LIFE)」により、サービス利用者の様々なデータを報告しなければ算定できない加算が数多く新設されました。厚労省は、データを集めることで「科学的に裏付けられた介護の展開に結びつける」としていますが、蓄積するデータが介護の改善にとって本当に有益かは全くの未知数です。むじろ、サービスの量や質の「標準」化をはかり、将来的にはその「標準」以外のサービスは認めないということにもなりかねません。介護保険制度は、個人の生き方を尊重し、その人の個性を大切にして、生活上の支援などを進めていく一人一人にあわせたサービスです。「標準」化をすすめるのでなく、高齢者の生活基盤を整え、必要な介護が十分に受けられるように介護報酬を引き上げることが何よりも重要です。
また、新型コロナ禍で介護保険料や利用者負担の支払いが難しくなっている方もますます増えています。保険医協会では、介護報酬の引き上げで介護サービスの充実を図ると同時に、介護保険料と利用者負担の引き下げを行うよう求める署名にも取り組んでいます。ぜひご協力ください。