2021年8月
【木曜】 震災によるアスベスト被害
阪神・淡路大震災から26年が経過しました。被災地では多くの建物がこわれて大きな被害となりましたが、倒壊した古い建物には多くのアスベストが使用されており、がれき処理のほこりと共に大量のアスベストがとびちりました。アスベストによる健康被害は、20~50年の長い潜伏期の後に発症するため、今なお注意が必要です。
建物に吹きつけられたアスベストは飛び散りやすく、最も発ガン性が高い青色や茶色の石綿も含まれており、厳重な対策が求められます。アスベストに関する規制は、1975年に吹きつけアスベスト濃度が5%以下に定められ、震災直後に青石綿・茶石綿の使用が禁止されました。即ち、震災で倒れた建物には高濃度の青石綿・茶石綿が使用されていたのです。また水まきも十分ではなく街中が解体現場のようにほこりにさらされていました。
アスベストはどの程度飛び散ったのでしょうか。当時環境庁ではアスベスト濃度の測定調査を行っていました。しかし、その測定値は民間で測定した1/10程度と低く、現場の状況とあまりにもかけ離れていました。この疑問を晴らすために調査資料を検討したところ、測定されたのは白石綿だけであったことが判明しました。実際に飛び散った青石綿・茶石綿が測定されていないにもかかわらず、記録された白石綿濃度値が誤って「アスベスト濃度」として扱われ、健康リスクまでもが相当に低く評価されることとなり、被害者の実態調査さえ行われていません。実際の健康リスクは数十倍高く評価されなければなりません。
2018年に報道されましたが、被災地で1か月間勤務した警察官が後に肺がんの一種である中皮腫を発症して死亡し、公務災害が認められました。この事実は極めて重大であり、被災地の曝露の程度がいかにひどいものであったかを示しています。作業員以外にも被災地で避難生活を過ごした住民や全国から駆け付けてくれたボランティアの人たちも高いリスクを負ったことになり注意が必要です。さらに、アスベストは少量の曝露でも病気になることが知られています。阪神・淡路大震災では前代未聞の環境曝露が発生し、今後の被害者の増加が危惧されるため、少しでも気になる人は検査を受けることが大切です。役所に電話して「アスベスト被害が心配なので検査を受けたい」と訴えて指示を受けるようにしてください。