2021年10月
【金土日】新型コロナウイルス感染症と変異種
新型コロナウイルス感染症は医療従事者や高齢者から始まったワクチン接種で感染拡大を防げるだろうと考えられていました。実際、ワクチン接種により、高齢者の死亡や病院・介護現場での集団感染(クラスター)は減少しました。しかしながら1月からの第3波、4月の第4波、8月の第5波と周期的な感染拡大を止めることはできていません。その一つの原因がコロナウイルスの突然変異です。2021年7月現在、変異ウイルスは アルファ(イギリス株)、ベータ(南アフリカ株)、ガンマ(ブラジル株)、デルタ(インド株)の4種類が確認されています。これらはそれぞれ最初に確認された場所の名前で呼ばれたため、あたかもそこで発生したような印象を与えていますが、多くの地域で同時に確認されていますので、自然発生的に変異したものと考えられます。
コロナウイルスはその形に王冠のような突起を有します。この突起(スパイク)が細胞と接触、結合することで感染します。もともとウイルスは増殖のたびに多くの突然変異が生れます。ただ、今回の4つの変異種は突起部分の遺伝情報に関する変異なので、感染のしやすさ、重症化に関係します。幸い現在使用されているワクチンの予防効果はどの変異種についても一定の予防効果を期待できます。このため、現在感染の中心となっている20代から40代へのワクチン接種を急ぐ必要があります。さらに新型コロナウイルス感染症が重症化する場合、従来の感染症ではまれにしか起こらない免疫の過剰反応(サイトカインストーム)が多くの患者さんにおこっています。ウイルスが変異した場合、従来種に比べ、サイトカインストームが容易に起こり、若い人でも重症化し易いと考えられます。ですから若いからと言って単なる風邪だと思わず、きちんと診断を受けるようにしましょう。また万が一感染した場合は、保健所、医療機関に相談し、重症化しそうな発症後4日目から7日目に適切な治療を受けるようにしてください。