2021年10月
【木曜】 解体建物のアスベストと住民説明会
皆さんは、住民説明会で「法を守って工事を行うので安全だ」という説明に満足していないでしょうか。法や規則は最低限守るべきものであって安全対策とは異なり、法律には安全という言葉はありません。安全対策はその現場の状況に応じて、最悪の事態を想定して講じる対策です。住民説明会では、具体的な説明を聞くことにより、互いの信頼感が築かれるのです。知らなくて当たり前という強い気持ちで質問し、少しでも疑問があればしつこいくらいに相手の説明を求めてください。おそらく会場には同じ気持ちの人が沢山いますし、そこから問題点が次々と明らかになることもよく経験するところです。疑心暗鬼になることなく工事の進み具合に注目して住民や作業員の安全を守ることが大切です。
そこで、解体建物のアスベスト調査について説明会で重要なポイントを2つあげます。1つ目は、資格を有する人が調査をしたかどうかです。現在調査資格には、国交省の「建築物石綿含有建材調査者」と民間団体の「アスベスト診断士」があるだけで、「作業主任者」は調査資格者ではありません。2つ目は、調査を行った人が、建物の設計図書をきちんと調べたかを確認することです。設計図書(これは建物の履歴であり、診療カルテに該当します)は軽視されがちですが、客観的な資料として重要であり、後に検証する際の資料となるので、設計図書を調べたかを確認しましょう。工事に着手する前に適切な調査を行うことが飛散を予防するために最も大切です。
公共事業では役所が住民説明会の主役となることによりいくつかの問題が起こります。役所は事業計画を立案することから始め、法や規則に照らしながら工事方法を考え、これらを受注した業者に指示します。実際の事例ですが、小学校のアスベスト除去の安全対策について問題が起きました。本来は、生徒たちが居ない夏季休暇などに行うべき危険な工事ですが、校庭に生徒たちが居ながらにして行う場合にはより厳重な安全対策が必要です。特に外壁を塗る材料の除去においては、作業の困難さに加えアスベストが漏れ易く危険であるため、重点的に漏れをチェックするよう求めました。ところが、役所は「法を守れば飛散しない」を繰り返すだけで話になりません。これは現場の作業に精通していない役人の限界であり、脆弱な安全対策はその象徴と言えます。子供たちの安全を確保するためには、学校関係者や保護者の皆様の声が不可欠です。匿名の電話でよいですから、役所の担当課に質問したり安全策を求めてください。役所が行う公共事業には思わぬ落とし穴があり、決して安全を優先しているものではないことを肝に命じておきたいものです。