2021年11月
【水曜】 レジオネラ肺炎
肺炎は日本の死亡原因の第4位であり、高齢者の増加により今後益々増加が予測されます。急性経過で咳、痰、呼吸苦など呼吸器症状や、発熱、全身倦怠感など全身症状に加えて、胸のレントゲンやCT検査で肺に新たな浸潤影(くもり)を認めた場合"肺炎"と診断します。肺炎を起こす原因により、肺炎球菌に代表される細菌性肺炎と、新型コロナウイルス感染症、マイコプラズマ、や今回のテーマのレジオネラなどによる非定型肺炎とに分類されます。
レジオネラは、浴槽の水など、温かく栄養分がある水の中に生じるヌルヌルした、バイオフィルムという膜の中で増えます。バイオフィルムにより汚染された水がエアロゾルとなりレジオネラを吸い込むことで肺炎を発症します。レジオネラ肺炎は、肺炎のうち1%と頻度は少ないものの、病歴と症状が特徴的です。温泉、循環式風呂、腐葉土を扱う作業などで感染することが多く、しばしば集団感染します。また、急激な経過で、頭痛、関節・筋肉痛、消化器症状など呼吸器以外の症状で発症するため、熱中症と間違われることもあります。高熱で発症し、呼吸器以外の症状が目立った重症感のある肺炎で、痰がでない、血液検査で炎症を示す値が高く、ナトリウム、血小板値が低く、LDHやCK、CRPといった肝臓や筋肉の酵素の値が高い場合、レジオネラ肺炎の可能性が高いと報告されています。診断はレジオネラ尿中抗原検査で行います。治療はアジスロマイシンやレボフロキサシンといった抗生物質で治療を行います。
レジオネラ肺炎を予防するためには浴槽の配管にこびりついたバイオフィルムが除去されるように徹底的に洗浄を行うこと、循環浴槽水や溜め湯をエアロゾルが生じる可能性があるシャワーなどに用いないなどの工夫が必要です。また、ひとたび肺炎を発症した場合、水の診断・治療が遅れると重症化し命に関わることがありますので、水が滞留する湿気の多い環境にいた方に急に高熱や強い全身症状が生じた場合、レジオネラ肺炎の可能性を考える必要があります。