2021年12月
【火曜】 妄想性障害
妄想性障害は、1か月以上持続する思い込み、他者に理解されない誤った考え、つまり妄想を訴える精神障がいです。妄想性障害は統合失調症領域の疾患として分類されますが、一般に統合失調症と違って幻覚などの他の精神症状は伴いません。
妄想と単に誤った考えを持つ場合との違いは、妄想の場合は矛盾する明らかな証拠がどれほどあって、それを示されても信じ続けるという点にあります。妄想の内容は通常の生活で起こりうることについて、心配や不安が止まらず、過剰になっているものや一方で起こりえない状況の荒唐無稽な内容である場合もあります。
妄想の程度により社会生活の障害の程度が異なります。妄想の程度が強ければ言動や行動が異常となり、社会生活の障害を生じ、精神科医療が必要になってきます。軽い場合は治療を受けず、生活している人も多いですが、症状がひどくても治療をしないまま、社会生活において困難を抱えている方も少なくありません。孤立していることは増悪する大きな要因と言えます。
一般的に中高年の方、女性に多いですが幅広い年齢層にみられます。また妄想は他の精神疾患でもみられる症状ですので鑑別がむつかしい場合もあります。たとえばアルツハイマー型認知症などの認知症では記憶障害に伴う物盗られ妄想や嫉妬妄想などが見られます。また重症のうつ病でも罪の意識や、病気や貧困であるという思い込みが見られます。統合失調症や妄想性障害の妄想ではその矛先が他者に向いている一方で、うつ病の妄想では自分に向いているところが大きな違いです。
治療については当然、妄想が改善することが目標ですが、妄想という思考を持つまで長期間経過している場合は容易に改善には至りません。生活障害、行動障害が激しい場合は入院治療が必要になります。一般に医療が必要な状態の妄想性障害の方は寝ている時以外の時間の多くを妄想的な思考に支配されているので、それが治療により普段の生活で必要な考えが優先されるようになれば良い経過といえます。それには抗精神病薬、抗不安薬などの薬物療法に加え、治療者の精神療法、孤立をもたらさないように家族・支援者のサポートが重要です。