2022年1月
【年末年始】建設アスベスト訴訟最高裁判決の到達点
2021年5月17日、最高裁判所は、建設労働者のアスベスト被害に関した損害賠償裁判で、国及び建材メーカーの責任を認める判決を言い渡しました。建設アスベスト訴訟は、2008年、東京地裁と横浜地裁にそれぞれ原告団が提訴して以来13年が経過し、全国17提訴、被害者932人、原告数1156人(2020年2月現在)に及んでいます。
今回の最高裁判決では、判断が分かれていた一人親方の被害について国の責任が確定し石綿のシェア(市場占有率)が高い主要企業10社の法的責任が確定しました。また、国の違法期間について1975年(昭和50年)10月1日から2004年(平成16年)9月30日と30年間の期間を確定しました。しかし、実際にはアスベスト被害はこの期間を超えて広く存在するため、救済に線引きをしたことは極めて不当で、また、屋外作業者(屋根設置作業者など)に対する責任を否定したことも極めて不当です。
昨年12月14日、この最高裁判決に先立ち、最高裁の上告不受理の決定が確定していたことから、国の法的責任は一部確定していました。同月23日、当時の田村憲久厚生労働大臣は原告代表者らに面会、謝罪するとともに協議の場を設けることを表明しました。今年5月18日、当時の菅義偉総理大臣が原告らに面会し、直接謝罪の意を表明、同日午後、原告代表と田村厚生労働大臣との間で基本合意書が調印されました。
基本合意には①国は原告らに謝罪する。②国は係争中の訴訟について統一的な和解基準に合意する。③国は未提訴の被害者に対する補償を行う。給付金支給制度の法制化。④国は継続協議に合意する。という内容があります。
厚生労働省は石綿にばく露し、石綿関連の疾病を発症された労働者、一人親方やそのご遺族に対する給付金制度を令和3年6月16日に公布し、1年以内に給付金の給付を開始するとしています。給付に関しては、細かい規定があります。厚労省はホームページでもご案内していますが、少しでも心当たりのある方は、「兵庫県保険医協会」、または「中皮種・じん肺・アスベストセンター」(電話 03-5627-6007(代表))等にご相談ください。