2022年5月
【月曜】 陰嚢水腫
陰嚢水腫とは精巣(睾丸)の周囲に液体がたまって陰嚢がふくらんだ状態の事です。陰嚢の片側が大きくなり、左右差が出現します。両側ともに大きくなることもあります。痛みなどは特にありませんが、水腫が大きくなると、歩行時の違和感や圧迫感などを感じることがあります。
子供の陰嚢水腫と大人の陰嚢水腫とは少し成り立ちが異なります。子供の場合は、精巣はお母さんのお腹にいる時には、自分のおなかのなかから陰嚢まで下降してきます。この際におなかの臓器を包んでいるうすい膜である腹膜を陰嚢まで引きずっておりてきます。つまり陰嚢にはおなかの中とつながっている薄い膜がしっぽのようにはいりこんでいて、精巣にくっついているわけです。生まれる頃にはこのしっぽの付け根が閉じておなかの中と、つながらなくなります。このしっぽが完全に閉じないでいる場合があります。しっぽのつけ根が広くおなかとつながっている場合は腸がしっぽの中に落ち込んできて陰嚢がふくらみます。これが子供によく見られるソケイヘルニア(脱腸)です。腸が落ち込むほど広くはないけどこのしっぽが閉じないでいるとおなかの中にある水分が陰嚢に降りてきてたまります。朝方起床時には小さく、夕方入浴後に大きいといった時間によって大きさが変わることが特徴です。これが子供の陰嚢水腫です。子供の場合は2~3歳頃までは自然に治ってしまうこともありますので、近くの医療機関に行って相談してみてください。
大人の場合は、多くの場合原因不明で、40歳以上の方に多いようです。触診やエコー検査を使用し液体の貯留などがないかどうかで診断します。治療は手術が原則です。一時的に液を抜く方法もありますが、再発及び感染の危険性もあります。手術が良いか、液を抜くことが良いか一度、医療機関で相談してみてください。また、精巣の腫瘍との鑑別も大切ですので、陰嚢の膨らみに気付けば早期に医療機関に行きましょう。