2022年6月
【木曜】 気管支拡張症
気管支拡張症とは何らかの原因で気管支の壁が傷つくことで、気管支が次第に拡張し、様々な症状をきたす病気です。原因は先天的なものと後天的なものがありますが、ほとんどは後天的な原因で起こります。また男性よりも女性に多く見られます。もっとも重要な原因は気道感染症によるもので、乳児期の感染が特に問題となります。感染を繰り返すと気管支の壁が壊れたり弱くなって拡張します。拡張した気管支では細菌が増殖して炎症を起こし、さらに気管支拡張が進行します。結核や非結核性抗酸菌症などの感染症後や関節リウマチなど膠原病による二次性の気管支拡張症もあります。
気管支拡張症になると咳や痰が多くなり、気管支炎や肺炎を合併しやすくなります。また慢性副鼻腔炎、すなわち蓄膿症を合併していることも多く、この場合副鼻腔気管支症候群とも呼ばれます。気管支粘膜が炎症により毛細血管が増加すると、血痰や喀血の原因にもなります。
気管支拡張症は胸部レントゲンでは気管支の壁が厚くなっている様子や、袋状や輪っか状の影が見えます。確定診断にはCT検査により診断します。また感染の原因となる菌の確認のため喀痰培養検査も必要です。
いったん拡張した気管支は残念ながら元に戻ることはありません。感染を繰り返すことで徐々に進行し呼吸機能が低下するため、悪化すると酸素吸入が必要になることがあります。そのためひどくなる前に診断し、それ以上悪化しないように治療をすることが重要となります。
咳や痰が長期にわたり繰り返す場合は、専門医への早めの受診、あるいはかかりつけ医への相談をお勧めします。
咳や痰の症状や気道の炎症を抑えるために、マクロライド系の抗生物質の少量長期投与が有効です。痰が多い場合は去痰剤の投与や痰を出しやすい体位の指導をします。しばしば非結核性抗酸菌症という病気を合併し、その状態により抗菌剤の服用が必要となります。
血痰が出るときは止血剤を投与し、喀血など出血量が多いときはカテーテルにて止血処置が必要になることがあります。
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンによる感染予防も有効です。
生活面では規則正しい生活をし、しっかり栄養を取って上気道感染を予防することが大切です。