2022年9月
【水曜】「コロナワクチン接種後の長引く諸症状」について
mRNAタイプの新型コロナワクチンを接種した直後の気分不良や発熱や倦怠感が知られています。それは「副反応」と呼ばれ、ほとんどが、2~3日中に軽快します。一方、翌日ないし2~3週間後から様々な体調不良を訴える人が一部におられます。具体的な症状としては、頭痛、めまい、浮遊感、記憶力や認知機能の低下、動悸、胸痛、手足のしびれ、易疲労感、食欲不振、不随意運動、歩行障害など実に多様です。そのために、通学や仕事に支障をきたした状態が1ケ月以上、長い人では半年から1年も続いて困っておられます。
これらの「接種後の長引く諸症状」は、米国の医師の調査では100人に1人程度と報告されているので、決して多くの人にみられるものではありません。しかし日本においては、そのような人の存在が医療界ではあまり知られていません。しかし内科や脳外科や神経内科や耳鼻科など様々な医療機関を続々と受診されているのが実態です。一部の人は難民化しています。
「接種後の長引く諸症状」を訴える人は、ほぼ全員が何軒もの医療機関を受診ないし入院して様々な検査を受けておられ、この状態の最大の特徴は、既存の検査では異常がでないことです。その結果、「気のせいではないか」とか「うつ病ではないか」と言われて最終的に精神科受診を勧められた方も多くおられます。確立された治療法はありませんが、亜鉛製剤、ビタミン剤などの抗酸化物質、サプリメント、漢方薬などの投与が少しずつ効果をあげています。薬物療法以外に鍼灸やアロマテラピーなどの東洋医療や統合医療も有効です。米国の医師達は、食事制限や栄養療法などを積極的に行っています。
この病気の特徴は、1)症状が実に多様、2)いくつかの症状が時間的にランダムに出現する、3)日常生活に支障をきたす、などです。まずは早急な実態調査が望まれます。その状態の解明や治療法の開発が待たれます。そして休学や休業に関する補償も必要です。コロナ後遺症外来と同様、「ワクチン接種後の長引く諸症状」を専門的に診療する受け皿の整備も急務と考えます。