2022年10月
【水曜】 過換気症候群
過換気症候群は精神的不安や緊張で、普段と比べ深い呼吸や浅い呼吸を繰り返す、いわゆる過呼吸の状態となり、血液がアルカリ性になることにより様々な症状が出現する病気です。肺炎、喘息、気胸などの肺疾患、心不全、代謝異常、脳炎などの中枢神経障害、β刺激薬などの薬剤性、妊娠、発熱などの病気がなく、心因性ストレスが原因で呼吸の調整に異常をきたした疾患です。
幅広い年齢層におこります。呼吸回数が増加、過呼吸が出現し、呼吸困難、意識障害、手足のしびれ、けいれん、テタニーなどの症状があらわれます。テタニーとは、血液中のカルシウム濃度の低下に伴う筋肉の持続的な硬直です。
私たちは、呼吸の調節を、大脳皮質における行動調節系、動脈血酸素分圧や二酸化炭素分圧、pH変化を化学受容器で感知し調整する化学調節系、気道や肺に分布する受容器から迷走神経を介する神経調節系で行います。過換気症候群は、このうち行動調節系に異常がおこり発症します。
診断方法としては、まずほかの病気がないかを調べます。具体的には、胸部X線、心電図、造影CTなどです。また、動脈血液ガスの検査で、血液中の炭酸ガス濃度が低下し、pHが上昇し、アルカリに傾きます。pHがアルカリになると血液中の遊離カルシウム濃度が低下します。
過換気の改善とともに全身の症状は改善しますが、心因性の場合、誘因となるエピソードがないか確認をする必要があります。また、繰り返す場合にはパニック障害を有することが多いので、精神科的なアプローチが必要になります。
心因性の過換気症候群では命に係わる病気ではないので、不安をとりのぞいて深呼吸することで改善します。以前は紙袋を口にあてるペーパーバック法が用いられていましたが、低酸素のリスクがあることなどから、現在はすすめられていません。
発作をくりかえして過換気発作への不安がつよい場合は、抗不安薬や抗うつ剤が使われることもあります。また、何回も繰り返す場合は、過度の緊張や不安が起きる状況をさけるようにしましょう。