2022年11月
【金土日】アカシジア(静座不能症)
アカシジアという言葉は、皆様にとってみみなれない言葉かもしれません。そもそもアカシジアとは精神科領域のお薬の副作用の一つです。文字通りには、アカシジアというのは、日本語にすれば、静座不能と翻訳されています。つまり、静かに座っておくことが出来ないという意味です。具体的には、体や足のそわそわ感、むずむず感、灼熱感が生じ、座ったままでいられず、歩き回りたくなります。また、じっとしていられず、脚を小刻みに動かしたくなってしまい、姿勢を頻繁に変えたくなるといった症状です。いずれも歩行や運動によって軽減されることが特徴のひとつです。また、気分のソワソワ感より身体のソワソワ感が強いことも特徴だと言われています。
実際、臨床の現場においては、こういった症状が治療薬で生じた副作用なのか、うつ病に生じる不安焦燥なのか、統合失調症の不穏に伴う精神症状なのか区別がつきにくいケースがみられます。
アカシジアが生じる仕組みは、脳内のドパミンの働きが抗精神病薬などによって過度に遮断されることが一因だと考えられていましたが、アカシジアは、神経伝達物質のノルアドレナリンの濃度増加によることが発見され、これは、脳内の物質の伝達が上手くいかないことによる可能性が指摘されています。
抗精神病薬以外としては、抗うつ薬や、一部の胃腸薬などによっても引き起こされることがあるので注意が必要です。
アカシジアの分類としては、お薬の開始・増量からおよそ4週間以内、多くは数日以内に発症する「急性アカシジア」と、3か月以上たって発症する「遅発性アカシジア」、原因薬の中断により6週間以内に発症する「離脱性アカシジア」があります。
第一にとられる対処法として、原因となっているお薬を減量したり、別のお薬に変更して様子を見ます。
病状によって、薬の減量や変更が困難な場合においては、抗パーキンソン病薬やベンゾジアゼピン系のお薬を使うことがあります。特に精神症状なのか、アカシジアなのか鑑別が難しい場合は、ベンゾジアゼピン系の薬を投与するケースが多いように思います。アカシジアの症状が現れたら、かかりつけ医に相談して下さい。