2022年11月
【木曜】 酒さ(赤ら顔)
酒さは20歳以上の女性に多く、鼻、頬、顎が紅くなります。これは、これらの部位の毛細血管が拡がることにより、多くの血液が流れるために起こります。皮膚の紅みと同時に火照りも起こってきます。またピリピリした痛みも感じられてきます。これが初期の症状で、次にニキビのような症状が現われます。
ただニキビと異なるのは、ニキビでは毛孔に皮膚の脂肪が詰まってできる、コメドーと呼ばれる発疹が出るのに対して、酒さではコメドーは認められず、毛孔が紅くなって膿んでくることが特徴です。更に症状が進むと、鼻が盛り上がってきて鼻瘤(びりゅう)という状態、あの鉄腕アトムの漫画に登場する、「お茶の水博士」の鼻になってきますが、この鼻瘤は日本人には少ないと言われています。また、目の乾燥や充血が起こることもあります。
酒さの原因は、遺伝的なものと環境的なことが考えられていますが、完全には分かっていません。ただ、辛い物等の刺激物、アルコールやカフェインを含む飲料水を多く飲む、寒暖差、長時間にわたって日光を浴びる、感情の高ぶり、喫煙などは、症状をひどくします。
また酒さの症状は、アトピー性皮膚炎などで長期にわたって、ステロイド軟膏を塗っていて、その皮膚の副作用としての症状に非常に似ています。熟練した皮膚科医でないと、見極めが難しいところです。これは酒さ様皮膚炎と診断され、治療法が違ってきます。
酒さの治療は、飲み薬としてはテトラサイクリン系の抗生物質やビタミン剤、塗り薬としてはかつては、タクロリムス軟膏やイオウを含んだローションが用いられましたが、最近、トリコモナスなどに効く、メトロニダゾールという飲み薬をゲル状にした軟膏が、有効であることが分かり、今までは自費診療で処方されていたものが、最近、欧米に先立ち、保険診療で処方できることになりました。多くの患者さんにとっては福音と言えそうです。
酒さの症状は、酒さ様皮膚炎やニキビを初め、脂漏性皮膚炎、日光による皮膚炎、或いはエリテマトーデスのような、膠原病などとの鑑別が必要ですので、必ず専門医を受診されることをお勧めします。