2023年5月
【水曜】 十字靭帯断裂
膝関節はその形から蝶番(ちょうつがい)関節と呼ばれます。曲げる、伸ばすという動作を、安定して行うためには横へのぐらつきを防ぐ内側と外側の側副靭帯、前へのぐらつきを防ぐ前十字靭帯、後ろへのぐらつきを防ぐ後十字靭帯の存在が重要です。
前十字靭帯と後十字靭帯は協調して膝のスムーズな動きをコントロールし、前後方向への安定性を与えます。その十字靭帯が何らかの原因で断裂すると、膝関節のゆるみと痛みを生じます。
前十字靭帯断裂はラグビーのタックルのように膝を外側に曲げる力が加わった場合や、バスケットボールなどのスポーツ中にジャンプして着地し方向転換した時、急停止した時などに起こります。女性に多い傾向があります。受傷時には痛みと関節の腫れで競技を続けられないことがほとんどです。
一方、後十字靭帯断裂は、ラグビーやサッカーで膝から落ちた時のように、膝を曲げてスネの上端部を強打することにより損傷します。自覚症状が軽いことも多く、競技を続けられる場合もあります。
十字靭帯が断裂すると、関節内に血が溜まり、膝関節の屈伸可動域が減少します。関節の曲げ伸ばし時に痛みがでます。受傷した急性期には、なるべく安静にする、腫れている部位を冷やす、受傷した脚を心臓より高くすることが有効です
膝靭帯断裂は、一つだけの靭帯が損傷する単独損傷だけでなく、複数の靭帯が損傷したり、半月板損傷を合併したりすることもあります。整形外科を受診して、しっかり診断してもらうことが重要です。
前十字靭帯断裂では、受傷時にブチと音がし、激痛で歩けなくなることも多いのですが、後十字靭帯断裂では痛みも軽度で、歩ける場合もあります。少し不安定な感じはあるものの日常生活で不便がない人もあります。しかし病院に行かず、無治療で放置すると、将来的に変形性膝関節症をきたすおそれがあります。
陳旧化した症例では、膝くずれを繰り返し、その結果半月板損傷を起こすこともあります。
膝靭帯断裂を疑うような膝の痛みが起きたら、整形外科を受診して、しっかり診断してもらうことが重要です。