2023年7月
【木曜】 真珠腫性中耳炎
本日は真珠腫性中耳炎という病気のお話です。
皆さんよくご存じの中耳炎には、実は色々な種類があります。お子様がよくかかる耳が痛くなる急性中耳炎や、耳がこもって聞こえが悪くなる滲出性中耳炎、それと慢性中耳炎です。
真珠腫性中耳炎は慢性中耳炎の一種です。慢性中耳炎の中には、鼓膜に穴が開いてしまって耳垂れを繰り返し、聞こえが悪くなる単純性慢性中耳炎という病気もありますが、決して忘れてはいけないのが、本日お話しする真珠腫性中耳炎です。
真珠腫を漢字で書きますと、真珠はパールの真珠、腫は腫瘍の腫の字です。中耳炎ですからもちろん腫瘍ではないのですが、炎症によって生じたカスが、光を当てるとあたかも真珠のように光って見えることからこの名がつきました。
きれいな名前とはうらはらに、真珠腫性中耳炎は危険なタイプの慢性中耳炎といわれています。何故ならば、真珠腫性中耳炎は周囲の骨を溶かしながら広がっていく傾向があるのです。中耳の周りには、外部の音を耳の穴から鼓膜を介して耳の奥に伝える働きを持つ耳小骨、顔の表情を作る筋肉を動かす働きを担っている顔面神経、聴こえを支配している蝸牛管、体のバランスに関与している三半規管があります。その上、中耳のすぐ上にはきわめて薄い骨を隔てて、大脳が存在しています。
そのため、真珠腫性中耳炎によって周囲の骨が溶かされて、周辺の大事な組織に炎症が及ぶことにより、顔の動きが悪くなる顔面神経麻痺や、難聴、ひどいめまい、時によっては命にかかわるような髄膜炎、脳膿瘍まで引き起こす可能性があります。
初期にはほとんど症状がなく、気づきにくい病気ではありますが、難聴を自覚されている方はぜひ一度耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
早期であれば手術によって十分に制御可能な病気ですが、進行してしまうと非常に厄介です。くれぐれも、たかが中耳炎と侮らないようにしてください。