2024年3月
【金曜】パーキンソン病
パーキンソン病は60歳以上では100人に一人が発症する疾患です。街を歩いていると「あの人パーキンソン病かな?」と思う時があります。それくらいよくある疾患です。
この疾患は、実は初めは「振戦麻痺」と名付けられましたが、ほとんどそう呼ばれたことがありません。のちの医師がこの疾患を問題視した時に、既に発見されていた事に気付き、疾患名を発見者が主張した「振戦麻痺」では無く、発見者の名前からパーキンソン病と呼び始め、これが現在世界中に広まっています。
パーキンソン病の3大特徴としては振戦、動作緩慢、姿勢反射異常です。振戦は"ふるえ"、動作緩慢は動きが遅いこと、姿勢反射異常はこけそうな時に反射的に足が出たりしないことです。
振戦は静止した時に起きます。例えば椅子などに座ってゆっくりしている時に起きます。時々物を取ろうとして起きる震えは本態性振戦、もしくは老人振戦と言って明確に区別されます。これまではこの振戦の区別が重要視されてきました。なぜなら、振戦がパーキンソン病で必須と考えられてきたからです。
パーキンソン病の原因は明確です。脳の一部の中脳という部位で、ドーパミンというホルモンを含む細胞が欠落しています。ドーパミンは機械における油のようなもので、筋肉の動きをなめらかにします。これが減少することで体が動きにくくなったり、ふるえが出たりします。
現在ではこれを目で見えるようにする方法が見つかり、診断に大変役立っています。びっくりすることですが、この方法が見つかる以前、診断は臨床症状だけで行われていました。このため振戦はパーキンソン病に特徴的と考えられてきましたが、再検討すると振戦がないパーキンソン病も存在していることが分かりました。
現在は動作緩慢が最も重要な症状となっています。冒頭の「振戦麻痺」と名付けていたら混乱に陥ってしまったかもしれません。パーキンソン病と名付けたことは大変な英断と思われます。
パーキンソン病の治療は、体内で少なくなったドーパミンを補充するための薬物療法がメインです。薬による治療法は数々あり、またその組み合わせも数々あります。
パーキンソン病は神経難病の中では治療法がある疾患です。ぜひかかりつけ医と相談するか、神経内科を受診して治療を受けて下さい。