2024年5月
【水曜】肛門がん
肛門がんとは、肛門から3cmほど上までの肛門管という部位に発生するがんで、肛門管がんとも呼ばれています。肛門がんは、すべてのがんの中で0.1%程度、2016年罹患者は全国で1000人程度とまれな疾患で、男性より女性の方が多く、高齢になるほど増加していく傾向にあります。
主な症状は、排便時の違和感や痛み、腫れやしこり、出血などがあげられます。
肛門がんの診断は、医師が直接肛門を診察する"肛門診"や"大腸内視鏡検査"にて行います。肛門がんが疑われると、一部の組織を採って顕微鏡で確認する病理検査を行い、肛門がんかどうかを確認します。
肛門がんは顕微鏡による診断結果によって主に腺がん、扁平上皮がんという2つのタイプに分けられます。腺がんは直腸がんと同様の治療となりますので、今回は扁平上皮癌についてお話しさせていただきます。
肛門扁平上皮がんは、性行為によるヒトパピローマウィルスというウイルスの感染や喫煙などが主な原因と考えられています。また体の免疫が落ちた状態の人が発症しやすい傾向にあります。
肛門扁平上皮がんの治療の中心は、放射線治療と化学療法と呼ばれる薬物治療の併用療法です。他の臓器や腫瘍から遠くのリンパ節に転移していない場合は、その治療で70~80%以上は治癒するとされており、手術と同等以上の治癒率が報告されています。手術療法と違って人工肛門にならないメリットもあり有効な治療法ではありますが、治療後の再発例や放射線、化学療法にて効果がなかった例に対しては、手術を行う場合もあります。
最後に、肛門がんの症状は、肛門痛や出血、しこりがメインであるため、いわゆるいぼ痔や切れ痔の症状と類似しています。いぼ痔や切れ痔がいずれ肛門がんになることはありませんがあな痔とも呼ばれる複雑な痔である、痔瘻という病気を長年放置すると肛門がんに至る可能性があります。
肛門の痛みや出血が続くようなら、自己判断せず、まずは肛門科を受診して、痔であるのか、そうでないのかを診断し、医師の判断に従って必要なら病理組織検査や大腸内視鏡検査を行うことをお勧めいたします。