2024年5月
【火曜】親知らずについて
親知らずは、前歯から数えて8番目の歯で、生えてくる場合と生えてこない場合があります。親知らずは、だいたい20歳前後に生えてきて、親に知られることなく生えてくる歯であることからこう呼ばれています。一番奥に生えてくる歯ですからとても磨きにくく、歯肉が腫れたり痛みがでたりするため、どうしたらいいか悩まれている人も多いと思います。
親知らずが正常に生えて、磨きやすく、上下がしっかり咬みあって機能している場合や、将来ブリッジや入れ歯の支えとして使える場合は抜かずに残したほうが良いと思います。また、親知らずを残しておけば、他の臼歯を抜かなくてはいけなくなったときに移植歯として使えることもあります。
ただ、生えるスペースが不足していることが多く、その場合歯の一部あるいは全部が歯肉や骨に覆われ、歯垢がたまりやすくなり、炎症を引き起こしやすくなります。また、炎症が隣の歯にまで及ぶとその歯まで抜かなくてはいけなくなる場合もあります。親知らずが横向きに生えている場合は、手前の歯を押して歯並びを乱したり、隣の歯の根を溶かすこともあります。
親知らずを抜くのは技術的にも難しく、抜いた後のトラブルも多いです。腫れたり、ひどい場合は嚥下障害、摂食障害を起こすこともあります。また、下の親知らずの根の近くには下歯槽神経という神経が通っていて、抜歯に際しこの神経を損傷し口唇などに知覚障害を起こすこともあります。
鼻の両脇にある上顎洞に近い上の歯の親知らずの場合は、抜くことによって上顎洞に穴が開き、そこに口のなかの細菌が入って蓄膿症になることもあります。
実際には親知らずの状態は人それぞれで、そもそも親知らずの抜歯が必要かどうかの考え方もさまざまです。親知らずで悩んでいる人は、抜かないリスクと抜くリスクをよく考え、口の中の状態をよく知っておられるかかりつけの先生に相談してください。