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健康情報テレホンサービス

2024年7月

【木曜】鼠径ヘルニアの話

 鼠経ヘルニアとは一般に脱腸と呼ばれ、下腹部全面、足の付け根部分に腸などの内臓が腹膜に覆われ飛び出してくる病気です。小児と高齢男性に多く、子供と大人では少し異なりますが、今回は大人のヘルニアのお話をします。

 腹部は四つの筋肉が縦、横、斜めに交差し、鼠径部では薄く、咳、排便の力み、重いものを持つなど腹部に強い力が加わったとき内臓が飛び出しヘルニアが起こります。

 症状は鼠径部の膨らみや違和感で、多くの場合は仰向けになり軽く押さえれば自然に戻ります。しかし飛び出したまま元に戻らなくなる嵌頓という状態になると、腸などが壊死を起こし、激しい痛みや嘔吐を生じ、緊急に手術を要することがあります。

 診断は患者さんからの話を聞き、立った時に鼠径部を見るだけで十分ですが、念のためCTやエコー検査を行います。

 治療についてお話しします。大人の場合嵌頓を起こす可能性が低く経過を見てもいいですが、薬や日常生活の工夫、腹筋のトレーニングなどでは治りません。また市販されているヘルニアバンドも根本的な治療にはならずあまり勧められるものではありません。治療は手術以外にありません。手術には2つの方法があり、飛び出している内臓を腹腔内に戻し、弱くなった筋肉の部分にメッシュという合成の布をあて補強します。服が破れたとき穴の開いたところに継ぎあてをするイメージです。この手術では、下腹部の皮膚を切る場合と、腹部に小さい穴をあけ腹腔鏡で行う方法があります。日帰りから2~3日の入院というのが一般的ですが、各医療機関で多少の差はあり、一週間の入院を要する場合もあります。再発する可能性は非常に低く安全な手術です。

 では手術はいつするのが良いのでしょうか。

 小児では嵌頓の危険性および鼠径部の膨らみという外見上の問題もあるので、小学校入学までにするのが良いでしょう。大人では嵌頓の危険性が低いので不快感が強く気になるようであればその時が手術のタイミングと考えてください。

 最後になりますが鼠経ヘルニアはよくある病気で、安全に手術治療ができます。気になる方は内科や外科の診療所、かかりつけ医に相談してください。

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