兵庫県保険医協会

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2024年8月

【火曜】診療報酬改定で変わったこと

 診療報酬とは、診療費を全国一律、1点あたり10円で設定したもので、医師・歯科医師や看護師・事務員などの人件費をはじめ、お薬・医療設備・検査などの費用を賄っています。2年に一度の改定を通じて、保険診療の範囲が広がり、適切な改定が行われれば、国民はより安心して十分な内容の医療を保険で受けられるようになります。しかし、医療費を削減したい国の思惑により診療報酬は適切に引き上げられず、一方で国民の窓口負担割合は増やされ続けてきました。

 2024年6月の改定では、初診料や再診料などがわずかに引き上げられましたが、お薬の処方や、糖尿病など生活習慣病の治療に関する点数が引き下げられたことなどにより、全体でマイナス0.12%の改定率となりました。医療費にして、400億円以上の削減です。

 医師や看護師の不足が顕著となった新型コロナウイルス感染症の拡大の際は、手術や入院が制限されるなど医療ひっ迫が生じました。新型コロナは五類感染症になりましたが、医療には非常事態に備えた「ゆとり」が常に必要であることがコロナ禍での苦い教訓だったはずです。にもかかわらず、これまで低く抑えられてきた診療報酬や物価高騰で疲弊する医療機関の経営を、いっそう苦しめるマイナス改定が行われたのです。また、ジェネリック薬などの価格が過剰に引き下げられ続けてきたことで生産コストに見合わなくなり、薬局や医療機関が必要な薬を調達できない事態まで起こっています。

 今回の改定で医療スタッフの賃金の引き上げだけに使える点数が新設されましたが、医師や受付事務職員が対象から外されるなど差別的な内容となっていることや、複雑な制度のため、多くの医療機関が申請を諦めています。

 また、病院に対しては、入院日数基準をさらに短縮し、入院患者の重症度の要件を厳しくしました。病院にとっては、これまでと同じ入院環境を提供することが困難となり、患者さんにとっても、安心して入院・退院することが以前より困難な状況が出てくるおそれがあります。低い利用率のままのマイナ保険証について、利用を促進するための点数も新設されました。情報の紐づけ誤りなどのトラブルが続出し、個人情報漏洩への危惧を国民が抱いているにもかかわらず、政府は貴重な診療報酬の財源を使って強引にマイナ保険証の利用率を高めようとしているのです。強引な押し付けで医療機関の負担も増え、閉院を余儀なくされている医療機関さえ生まれています。

 兵庫県保険医協会では、診療報酬の不合理に対する是正や適切な点数に引き上げること、医療費窓口負担の軽減などに患者さんと共に取り組んでいます。署名運動などに是非ご協力ください。

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