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2024年9月

【金曜】多重人格

 一般に言われる「多重人格」というのは、正式には「多重人格障害」や「解離性同一障害」と呼ばれます。私たちは通常、意識・記憶・感情・行動などが1つの人格に統合されているため、自分から見ても他人から見ても「その人」として認識されるでしょう。しかし、この疾患では、1人の人間の中に2人以上の人格が交代で繰り返し登場します。そして、ある人格が現れた時には、その他の人格がもつ記憶を失ってしまうため、いつもとは全く別の行動をとります。自分から見ても他人から見ても「その人は時と場合によって全くの別人」となってしまうのです。

 例えば、ある人格では「普通の社会人」として勤務していても、別人格では話し方も行動も全くの「小学生」というような感じです。そして、「普通の社会人の自分」は、「小学生になった自分」のことを全く覚えていません。当人にとっては、社会生活を送る上で制限が多くなり、かなりの苦痛を伴う疾患だということがお分かりいただけるかと思います。

 ただ、この疾患はまれな疾患です。そして、飲酒した時やてんかん発作時にこの状態になっても、「多重人格障害」「解離性同一障害」とはいいません。

 原因としては、人格が形成される前の子供時代に受けた暴力・虐待などのトラウマが考えられています。最近、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という疾患をよく耳にします。PTSDはトラウマになる出来事と症状の因果関係が割とはっきり説明できますが、「多重人格障害」「解離性同一障害」の場合は、一度その疾患にかかってしまうと、そこまで直接的にトラウマになった出来事に出会わなくても症状が出るようになります。

 治療は、状態により薬物療法も併用しますが、やはり精神療法が重要です。専門的な治療となるため、熟達した精神科医や臨床心理士がいる大学病院や精神保健福祉センターへ相談することをお勧めします。そのような施設に直接アクセスするのが難しい場合は、もちろん近くの精神科・心療内科クリニックを受診していただいて構いません。

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