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2025年4月

【金土日】アルツハイマー型認知症の新しい治療薬

 認知症は65歳以上の高齢者に多く、疑いのある方も含めると、実に高齢者の10人に1人は認知症であるともいえます。認知症は、大きく「アルツハイマー型」「レビー小体型」「脳血管型」などに分けられます。ここでは、「アルツハイマー型」認知症の薬について解説します。

 アルツハイマー型認知症の進行には、脳内でアミロイドβ(ベータ)という異常なタンパク質が蓄積することが深く関与していることが分かっています。これまでの治療薬としては、「ドネペジル」や「ガランタミン」など、神経細胞からほかの細胞に情報を伝える化学物質の一つであるアセチルコリンの濃度を高める薬が広く使用されてきました。しかし、これらの薬は症状を一時的に緩和するだけで、疾患の根本原因に働きかける薬ではありませんでした。

 近年、軽度のアルツハイマー型認知症や軽度認知症の治療を目的に開発された新しい治療薬「レカネマブ」は、現在、臨床現場でも使用され始め、注目を集めています。この薬は、脳内に蓄積したアミロイドβを除去する薬で、臨床試験では認知症の進行をはっきりと遅らせる効果が確認されています。疾患の根本原因に働きかける治療法として、患者と医療従事者の間で大きな期待が寄せられています。ただ処方できる医療機関は限られているため、かかりつけ医から専門医療機関への紹介が必要です。またごく初期の患者で、検査でアミロイドβに問題があることが明らかである方など、適応の患者も限られており、誰でも使える薬ではないことにも注意が必要です。

 最近の研究では、ドネペジルやガランタミンとレカネマブを併用することで、より効果的な治療ができる可能性があることが分かってきました。この併用療法によって、認知機能の維持がさらに向上することが期待されています。ただし、これらの治療を成功させるためには早期診断が重要です。

 また、アルツハイマー型認知症の治療においては、患者本人およびその家族を支える包括的なケアの必要性も高まっています。治療薬によって病状が緩和されたとしても、日常生活の支援や心理的ケアが欠かせません。地域社会や医療機関が連携し、患者やその家族を支える体制の構築が求められています。

 「レカネマブ」の登場により、アルツハイマー型認知症の治療は新しい局面を迎えています。臨床現場の使用経験が蓄積されることで、さらなる治療法の進化が期待されています。早期診断と適切な治療の実施がますます重要となっています。

 ご家族がご本人をみて認知症の兆候を感じた場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。

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