女性医師・歯科医師の会
[インタビュー] 「人対人」の仕事に魅力
2011.01.30
医学生の頃は戦争の真っただ中。焼夷弾が落ちてきたら、救助に出ました。鉄兜とオーバーを身につけて。ヘトヘトで帰っても、寄宿舎のお弁当はお豆だけ。どんなに白いご飯を食べたいと思ったか。体育の授業では、藁人形を「米兵だと思って突きなさい」。貧しくて、惨めで、本当に報われない時代でした。
終戦後、インターンで日赤病院へ行ったときは、友達と社交ダンスやスキー、縦ロールのパーマネントに、フレアスカート、ハイヒールを履いたりして。一気に青春を取り戻しました。
1965年、4人の子どもも大きくなり、夫と開業していた医院を離れ、三宮交通センタービルに1人で開業しました。途中で、夫が難病にかかり、仕事と介護のかけもちが続いたり、震災のときはビルが倒壊して7階の医院までハシゴで登ったこともあります。今思えば、よく身体が続いたなと思うほど大変な時期もありましたが、戦争を生き抜いた経験が私を強くしたんだと思います。
今、医院は息子に継いでもらい週1回の診察。患者さんには「あら先生、来てたんっ」と、診察よりおしゃべりが先です。他愛もない会話だけど、「先生から元気もらったわ。私も頑張るからねー」と言われると「やっててよかったな」と思います。
会話のない診療は絶対に嫌です。患者さんが言いたいことを言って、私も言いたいことを言う。人間対人間で心を通わせることに、ものすごく魅力を感じます。医師は、そういう仕事。だから長く続けられと思うんです。
戦争や震災を経験して思うのは、「世の中、平和であってほしい」ということ。つらかったあの日々を二度と味わいたくないし、子どもや孫にも味あわせたくないのです。
(聞き手・服部かおる)