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[インタビュー]宝塚歌劇団の経験を力に高齢者ケア

2011.08.15

宝塚歌劇団の経験を力に高齢者ケア

宝塚市・歯科 桝谷 多紀子

 中学3年生のとき、高校進学を前に大学進学か宝塚歌劇団をめざすのか進路選択を迫られ、悩みに悩んで、宝塚を選びました。
 高校3年間お稽古を積んで、宝塚音楽学校へ。入団後4年目に、トップスター・甲にしきさんの相手役に抜擢され、新人賞をいただけ、「やりきった」と感じ、退団しました。
 大河ドラマなど女優として活動しましたが、大学で学びたいという思いは消えず、30歳を超え、歯科医師になろうと決心しました。
 舞台人には歯が命。台詞・声楽・バレエ・日舞…どれも噛み合わせや口腔内の状態で、出来が大きく変わることを実感しており、興味があったのです。
 受験勉強は大変でした。それまで、朝から晩まで歌やダンスばかりで、机に向かう習慣がありません。つい動きたくなる足を椅子に縛りつけ、動かないことに慣れることから始めました。3年かけて勉強し、大阪歯科大学へ入学。卒業後、国会試験に合格するのにまた3年。ようやく歯科医師になれました。
 93年に宝塚で開業しました。医院の窓からは見慣れた宝塚大劇場が見え、落ち着きます。劇団の関係者の方々もよく治療に来てくださいます。協会には、開業時・震災時にとてもお世話になりました。
 7年前、かつての恩師と再開し、ショックを受けました。認知症を抱え、交友関係も失われて「死にたい」と絶望されていたのです。「高齢者にもう一度生きがいを持っていただくお手伝いをしたい」と強く思いました。
 認知症を学ぼうと、2006(平成18年)年に神戸大学大学院精神神経科へ入学しました。診療しながらの受験勉強や論文執筆は大変でしたが、何度も厳しいご指導を受けながら論文を書き上げ、昨年医学博士の学位をいただけました。
 辛いことはたくさんありましたが、宝塚ではダメ出しが当たり前でした。泣きながら、あきらめるものかと舞台に立ち続けた経験が、力になっています。
 大学院修了はまだスタートライン。高齢者の方が生きていてよかったと思える社会にするため、あきらめず、診療と研究を続けていきます。

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