女性医師・歯科医師の会
[インタビュー]父の死きっかけに在宅ホスピス医へ
2012.05.05
父の死きっかけに在宅ホスピス医へ
関本雅子先生
私は、2001年に開業し、在宅ホスピスに取り組んでいます。
毎日、患者さんの座りなれた椅子に座ってもらって状態を診ます。お孫さんが寄って来られる家や、たくさん昔の写真を飾られて話題が尽きない方など、いろいろな方がいます。がんは痛みとの闘いですが、在宅では、病院で見る患者さんの表情とは全く違い、日常生活を過ごされながら自分らしさをもっておられます。
神戸大学医学部卒業後、麻酔科医として病院勤務していましたが、父をがんで亡くしたことがきっかけで緩和医療に目を向けるようになりました。
父は、自分の勤めている病院に運ばれ、回復の見込みはありませんでしたが、息を引き取るまで点滴で栄養を送り続けました。このとき、父はこのような人生の終わり方を望んだのかなと不安になりました。
近年になって「患者さんの意思を尊重した医療を」と言われますが、従来の終末期医療は技術に応じた延命治療を行うだけが普通だったのです。
人生の先輩たちをがんで亡くしたとき、ホスピス医になると決めました。麻酔科からホスピス医への道は手探りでした。いろいろな研修の機会をいただき、ギッシリとメモをとる毎日でした。若くしてがんで亡くなった先生が「医療者のための緩和ケアにならないで」との言葉を残され、私は今でもその言葉を肝に銘じています。
今まで経験したこと、人との出会いが全て今の医者人生にプラスになっています。
これまで、たくさんの方をみとりましたが「その人らしい最期は日常生活の延長にある」と確信しています。患者さんが人生の総まとめをするメチャクチャ貴重な時間をともに歩めるなんてとても幸せな仕事です。