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女医の会インタビュー「子育てと診療二つあるから楽しい 」

2015.08.05

女医の会インタビュー 17 子育てと診療二つあるから楽しい


神戸大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野助教 立原 素子

 3歳の子の子育てをしながら、呼吸器内科で肺がんグループの責任者を務めています。
 医師を志望するきっかけは、カトリック系高校のボランティア活動として、大阪・釜ヶ崎で越冬ボランティアの手伝いをしたことでした。いろいろな経験をされた住民の方々と話し、人と向き合い、人の役に立つような仕事をしたいと感じたんです。
 福島県立医科大学へ進み、大学で出会った夫と結婚。その後も大学病院に勤務していましたが、子どもができてもフルタイムでバリバリ働きたいという私の気持ちを、自然と夫がよく理解していて、「両親が近くにいたほうがいい」と、地元である明石に帰るよう勧めてくれました。
 妊娠中の2011年、神戸大学で勤められることが決まり、もうすぐ引っ越しというときに、東日本大震災と原発事故が起きたのです。原発が2度目の爆発を起こした後、放射線の数値が跳ね上がったとの報道を見て、「お腹の子を守らないと」と強く思い、周りの先生にも理解いただけ、先に明石に帰ってきました。夫や同僚、患者を残し、自分だけが安全なくらしをしているという罪悪感が続きましたが、神戸大学の新しい仲間と生まれてきた子どもが癒してくれました。原発問題はまだ続いていますが、人生で一番怖かったこの経験から、家族の大事さ、命の尊さを教えられました。誰でも明日どうなるかは分からない。だからこそ、一日一日を満足して生きていきたいと思います。
 子育てと仕事の両立は、よく「大変だね」と言われますが、体力的にきついことはあっても、仕事にも同僚にも恵まれ、夫・家族の助けもあるおかげで、充実して楽しいというのが正直な気持ちです。「二つあるからできない」でなく、二つある「おかげ」で濃密な時間を過ごせています。子どもとの時間をめいっぱい楽しみながら、大学の肺がん診療のレベルをさらに上げるため、がんばっていきたいです。
 これから結婚・出産を考える先生方も、最初からできないと思わず、それぞれにあった勤務体系で、しなやかに対応していってほしい。子育ては20年。医者の仕事はそれよりもっと長いんです。医者になった以上、患者を診ることをやめないでいただきたいです。

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