環境・公害対策部だより
保団連近畿ブロック公害学習会 感想文
2014.07.05
原発の廃炉と賠償 実行する体制の確立を
保団連近畿ブロックは5月31日、公害環境担当者交流会と学習会を協会会議室で開催。立命館大学国際関係学部教授の大島堅一氏が「原発のコストと日本のエネルギー政策」をテーマに講演し、近畿各府県から医療者、市民ら87人が集まった。参加した松岡泰夫先生の感想文を掲載する。
福島原発事故は今も収束しておらず、15万人もの住民が避難生活を余儀なくされている。今回の大島教授の講演では、「原発のコスト」というものを多方面から分析し、ていねいに解説してくれた。
震災当時の政権与党・民主党のエネルギー基本計画も、旧来の自民党の政策と同様で原子力発電(原発)が中心であった。しかし、運命の日3・11に福島第一原発は大事故を起こした。
当時の菅首相は事の重大さに気づき、エネルギー・環境会議を興し、経産省からエネルギー政策案立案権限を移した。つまり脱原発へ大きく舵を切った。しかし、再び政権の座に返り咲いた自民党公明党の連立内閣は、再び原発推進路線をまい進している。
現内閣が示した新しい方針では、原子力は重要なベースロード電源として位置付けられている。さらに運転コストが廉価で環境にやさしいエネルギーとされている。
しかし本当にそうであろうか? 運転コストについては、原発誘致のための政策コストや事故処理コストも含めた社会的費用を全く無視している。環境に対する影響についても常に放射能汚染のリスクがあり、原発労働者の被ばくは避けられない。また放射能廃棄物の処理問題が未解決のままである。本格稼働した六ヶ所村再処理施設で排出される放射能は、普通の原発が一年間で排出するそれを一日で排出してしまう。
さらに、事故による損害賠償は遅々として進まず、賠償に対する大規模訴訟が複数提起されている。東京電力は政府の資金援助なしでは存立できない状況にある。電気料金の値上げや国民の血税が、無責任な電力会社の延命資金となり、損害賠償に充てられる。モラルハザードを回避するためにも東京電力の破綻処理が適当である。
国にも原発一辺倒な政策を進めてきた責任があり、真摯な反省に基づき、しっかりとした賠償と廃炉の双方を実行する体制の確立が急務である。
【長田区 松岡 泰夫】