環境・公害対策部だより
高浜原発再稼働許さない「パブリックコメントの提出を」
2015.01.13
環境・公害対策部長 森岡 芳雄
反核平和部長 近重 民雄
原子力規制委員会は12月17日、関西電力高浜原発所3・4号機について、安全対策が新規制基準を満たしているとする「審査書案」をまとめました。1月16日までの意見募集をへて、審査書が決定され、地元の同意などを経て、春にも再稼働が狙われています。
どんなに低い確率でも事故を起こすと取り返しのつかない被害を及ぼし、使用済み核燃料などの処分方法も決まらない原発は稼働すべきではありません。
協会は、いのちと健康を守る医師の団体として、高浜原発の安全性に懸念を示すパブリックコメント(下)を提出しました。
協会会員の先生方のご意見をぜひパブリックコメントの形で投稿していただいて反映していただければと願っております。よろしくお願い申し上げます。
提出先は、住所・氏名・連絡先を明記の上、FAX03―5114―2179 原子力規制庁安全規制管理官(PWR担当)宛てまで。原子力規制委員会のホームページ( )からも提出できます。1月16日まで。
「関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について」への提出文
団体名 兵庫県保険医協会
意見提出者 環境・公害対策部長 森岡 芳雄
反核平和部長 近重 民雄
われわれは、いのちと健康を守る医師の団体として、下記の点から、本審査書で認められた高浜原発3号炉及び4号炉の安全性に対し、科学的・技術的に懸念があり、再稼働に反対する。
1.本審査の基準となる新規制基準そのものが、欧州加圧水型原子炉の安全設備と比較して、1、安全上重要な設備の多重性が独立4系統に対して2系統しかない、2、原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留するコアキャッチャーの設置が求められていない、3、大型商用航空機の衝突に耐え、設計圧力を高めた二重構造の格納容器の設置が必要とされていない、4、サイバーテロへの防御の検討が不十分である、など、審査基準として不十分であり、安全性が保障されたとは、到底言いがたいものである。
2.関西電力は高浜原発の再稼働時にプルサーマル運転(プルトニウムを混合したMOX燃料を用いた運転)を実施するつもりでいるが、審査書案では、プルサーマル運転の危険性について十分考慮されていない。MOX燃料はウラン燃料と異なり、燃料が溶融する温度が低く溶融しやすい、制御棒の効きが悪い、臨界に達しやすいなどの危険性があり、安全余裕が削られるにもかかわらず、重大事故対策でMOX燃料を用いた場合の解析がない。
3.福島第一原発事故から、万が一事故が起きたときの避難計画の策定が安全性の確保のためには必須である。チェルノブイリ事故後、IAEAが定めた規制対策には「過酷事故時発生対応」として周辺地域に対する緊急避難などの対策が加えられたが、日本ではこれを地元自治体の責任としている。30キロメートル圏内に住む福井県四市町55,000人の90パーセントが30キロメートル圏外に避難するまで最長11時間10分もかかる。最大20,000台の自家用車が移動し大渋滞を引き起こすと想定されている。これは放射性物質が拡散する中、被爆せずに避難させる実効性のある安全な避難計画とはとても言えない。
4.福井県知事は「県主催の住民説明会はやらない」「地元同意は福井県と高浜町」と述べ、これに関西電力も同調しているが、高浜原発で事故が起こった場合、影響を受けるのは福井県と高浜町だけではない。30キロメートル圏内に12万人を抱える京都府は安全対策で京都府の意見が反映されていないとして再稼働を容認していない。近畿の水瓶である琵琶湖を汚染することから、滋賀県知事も再稼働を容認していない。生活や人格権を明らかに脅かすリスクが判明している以上、住民の健康と安全を第一優先に考えるのであれば30キロメートル以内の同意は必須であり、この地域内の同意なしの再稼働は認められない。
5.「3―1 地震による損傷の防止」で、耐震設計の目安となる基準地震動を最大700m/s2(700ガル)としているが、2007年の中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発1号機は1699ガルを経験していることから、この基準地震動はかなり低いと考えられ問題である。
6.「フィルター付きベント」の設置が猶予されたまま、いまだに整備できていない。