環境・公害対策部だより
東京電力の隠ぺい体質に抗議する
2016.03.12
東京電力の隠ぺい体質に抗議する
2016年3月12日
兵庫県保険医協会
第1035回理事会
東京電力は2月24日、新潟県の申し入れを受けて行った社内調査で、2011年の福島第一原発事故当時の社内マニュアルに、核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)の判定基準が明記されていたにもかかわらず、5年間見過ごしていたと発表した。マニュアルに沿えば、原発事故3日後の2011年3月14日朝には炉心溶融を判断できたが、東京電力は当時「判定基準がない」との説明を繰り返し、正式に溶融を認めたのは2カ月後だった。
判定基準は原発の緊急時の通報について定められた「原子力防災対策マニュアル」に記載されていたという。これはまさに福島事故のような事態に備えたマニュアルであるにもかかわらず、事故時に活用されなかったというのは驚きであるとともに、5年間もその内容を見過ごしていたというのは極めて不自然だ。
事故当時、原子炉がどういう状態なのかは、事故対策や避難対策にも関わる重大な事象である。もし東電が事故の程度を過小に見せようとしていたとすれば、重要情報の隠ぺいに他ならず、大問題である。これまで政府や国会、民間の事故調査が行われているが、この基準があることがなぜ発見されなかったのか、東京電力はすべての情報を公開し、詳細な調査を行い、責任の所在を明らかにすべきだ。
そもそも炉心溶融の判断基準は、当時この判断基準がなかったとしても中性子線、水素爆発、プルトニウムの確認などからできたはずで、政府においても避難民の命と健康を二の次にして事故を矮小化しようとした可能性がある。
われわれは、いのちと健康をまもる医療者として、事故による放射能汚染の危険性を内包し、安定処分できない危険な核廃棄物を出し続ける原子力発電所の新設、増設、再稼働を到底容認することはできない。東京電力は原発の再稼働準備をやめ、まず福島原発事故に真摯に向き合い、未だ明らかになっていない事故原因を究明するとともに、放射能汚染への対策に全力を注ぐよう求める。
政府は原発事故による放射能汚染に対して、科学的根拠なく安易に基準を緩和することを止め、その健康被害と真摯に向き合うべきであり、すべての原発の停止、廃炉を決定すべきである。